116:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[sage saga]
2011/03/24(木) 05:51:02.73 ID:R5eHM0g7o
黄金(まさかこいつ、あの時と同じ……!)
以前一度倒れたタックマンがこの世のものとは思えないパワーを発揮した。痛みを感じないかのように、黄金を攻撃する姿は――
黄金(――いや、違う)
タックマンがまたいきなりパワーアップしたのではない。
自分の力が、下がっている。
そうだ、黄金の身体は鉄壁の皮膚で覆われている。
だが、脳や内臓までは硬質化できはしない。タックマンの攻撃でぐらついたとき、確かに表面上のダメージはなかったが、その衝撃は脳にまで達していた。
関節への攻撃もそうだ。関節までは硬質化しない。ダメージは蓄積する。
ボディへのダメージも蓄積し、今になって響いてきたのだ。
タックマンは得たいのしれない力の暴走に頼るつもりなどなかったのだ。いや、覚えていたのかどうかも怪しい。
タックマンは自らにできる最大の行動を遣り通している。ただ、それだけだ、常にそうやって生きている。
黄金(そうか――こいつは)
化け物なんかじゃない。
やっとわかった。何故、タックマンは人間の強さを信じ続けるのか。何故、あの男と同じことを信じ続けられるのか。
タックマンはこの街を、この世界を救うに相応しい真の英雄(ヒーロー)になる資格を持っている。
それはタックマンが、人を信じ続けているからだ。
だがこの時代がそれを許さない。人々は信じる心を失い、本当のヒーローであるタックマンはヒーローにはなれない。
タックマンは狂人でも、怪物でもない。狂ってしまったのは、この時代だ。
タックマンは弱い人間で、ずっと悩み続けて、それでもここに立っている。こうして戦っている。
弱さを受け入れ、それでも乗り越えようとしている。
それは、本当のヒーローの姿。
黄金(お前は、ヒーローなんだな……)
人は誰もが自分自身の弱さから逃げている。弱い自分を仮面で隠している。
タックマンもそうだと思っていた。その仮面は弱い自分を隠すためのものだと。だが、違った。
タックマンの姿もまた、タックマンという人間の本来の顔なのだ。
タックマンは仮面を被ることで、弱い自分と真正面から向き合っている。自分自身すら、戦う対象としている。
弱い自分と向き合ってもなお、信じ続けている。人を、自分を、この世界を。
それは、本当の強さ。
黄金「……」
そして黄金は、膝をついた。蓄積されたダメージが限界に達したのだ。
もう、動くことすらできない。体こそ無傷に見えるが、脳や関節、内臓へのダメージはそう簡単に回復できるものではない。
タックマン「私の、勝ちだ」
黄金「お前は、すげぇよ……ヒーロー」
タックマン「……」
黄金「だがな、勝負は俺の勝ちだ」
タックマン「何……?」
黄金の身体を覆う黄金の皮膚が消滅していく。
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