209:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[sage saga]
2011/08/23(火) 21:12:45.97 ID:vrmooJWNo
日本 桜が丘 琴吹邸
斉藤「最近生傷が絶えませんね、お嬢様」
紬「……」
斉藤「どうか、なされましたか?」
紬「どうして、私になにかあると思うの?」
斉藤「お嬢様は外側の傷にはお強いですが、内面は私達と同じです。仮面をしていなければ私にもわかります」
紬「仮面、か。タックマンになることで、やはり私は自分の弱さを隠しているだけなのかしら。他人に対しても――自分に対しても」
斉藤「お嬢様。逃げるということは悪いことではございません。人は、立ち向かわなくても生きることができます。前に進まなくとも生き続けることができます。だから時には逃げ、時を待つことも必要です」
紬「でも……。斉藤、もしも、もしもよ。この世界が近いうちに滅びるとしたら。残された時間が少ないとしたら……あなたは、どうする」
斉藤「滅びる……。ですか」
紬「時間には誰も逆らえない。やがて必ず来る滅び――たとえば人の死のように、この世界にも死が迫っているとしたら。あなたはどうする」
斉藤「私は。そうですね……受け入れるでしょう」
紬「受け入れる? 諦めるの?」
斉藤「諦める。そうですね。諦めるとは、「明らめる」即ち「明らかにする」と言うこともできます。それは抗えない運命を受け入れることです」
紬「でも……世界には生きたいと願う人が沢山いるわ」
斉藤「だとしても、抗えば決して壊れない壁にぶつかり、自分の身体がくだけてしまうでしょう。たとえ誰のためだとしても、何人のためだとしても、同じことです」
紬「……そう」
斉藤「お嬢様。もし、この世界全てを救うおつもりならば、それは間違ったことだというしかありません」
紬「……どうして」
斉藤「それは人の力を超えたことだからです。他者の運命を自由にしようなどと、それは傲慢でしかないのです」
紬「傲慢……そっか」
傲慢、か。納得できた。タックマンは人間だ。人間に出来ることは限界がある。
たとえ変異種に勝てても、変異種は人間だ。人間は人間になら勝つことができる。
しかしそれは単に何かを壊す行為だ。何かを壊すことは何かを守ることより、ずっと簡単なことだ。
誰かを守るための力。それも結局は守りたい誰かを傷つける者を壊すための暴力に過ぎない。
その暴力で「世界を救う」。
これは傑作だ。悪質なジョークだ。
こんなことを本気で考えていたのだ。狂っている。
だが――
紬「――人の運命を変えること。それが傲慢なのだとしたら、それを背負えるのはタックマンしかいない」
斉藤「……それがお嬢様の答えですか」
紬「ええ。斉藤、私……」
私、世界を救うわ。
236Res/350.10 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。