226:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[sage saga]
2011/08/26(金) 18:09:03.40 ID:EF8IawbQo
日本 桜が丘 廃ビル
ワイズマン「……」
少女「おかえり」
ワイズマン「……」
ワイズマンは無言で固い床に寝そべる。
少女「なによ、無視?」
ワイズマン「……お前、明日世界が滅びるとしたらどうする」
少女「はぁ、何いってんの。頭打った?」
ワイズマン「たとえばの話だ。どうする?」
少女「……謝るかな」
ワイズマン「誰に」
少女「お父さんと、お母さんに」
ワイズマン「……」
少女「あたし、夢があったんだ。でも両親に反対されて、家、飛び出して。この桜が丘に来た。でも、見てのとおりあたしは何も出来なくて、根無し草。まともに一人で生きてくこともできなくて、盗みとか、働いて……」
ワイズマン「……そうか」
少女「……ね、キスしよっか」
少女はそういって、ワイズマンの上に身体を重ねる。
ワイズマン「逃げるのか?」
少女「逃げても良いじゃん。あんただって同じ。過去から逃げてる。あたしたち、似たもの同士だと思わない?」
ワイズマン「……かもな」
少女「じゃあ一緒に逃げようよ。もう正義とか悪とか、どうでもいい世界に。二人で逃げよ。逃げて、逃げて、逃げ続けて……きっと、あたしたちの生きられる世界があるよ」
ヒーローになるということ。
人として生きるということ。
ワイズマン(弱さを受け入れること)
少女「……あんたのこと、初めてあった時からずっと――大嫌いだった。今もそう。いちいち変なことにこだわって、格好つけて。そんなまどろっこしいあんたが嫌い」
ワイズマン「そうだろうな」
少女「でもね、そんなに嫌いになったのは、初めてだった。嫌なことから全部逃げ続けてきたあたしが、嫌いってはっきり言ってやりたいと思った初めての人だった。こんなに一人の人間にこだわったのは、初めてだった」
ワイズマン「……」
少女「あんたのことが大嫌い。だから……あたしのそばにいてよ……。あたしのこと、もっと傷つけてよ……傷つけあおうよ……」
一番近くにいる相手は、「一番傷つけることになる相手」でもある。
愛した人を傷つけまいと、守ってやろうと考えることは罪ではない。しかしそう考えるあまり、愛した人を傷つけても自覚がなくなってゆく。
「こんなに愛しているのに」「守っているのに」「尽くしているのに」「なぜ、傷つく?」
そうしてすれ違い、彼らの愛は空虚なぬけがらとなる。
だが、互いに傷つけあうことを知っているなら。互いに憎しみあう運命を知っているなら。
二人は永遠にもなれる。
かつて、誰かがそう言った。それが誰かなのか、わからない。だが、その言葉は真実だ。
少女は知っていた。愛するということは、傷つくということ、傷つけるということ。それはワイズマンの心にも伝わっていた。
――そしておそらくは、その奥に眠る田井中聡にも。
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