過去ログ - 紬「タックマン?」
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50:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)[sage]
2011/03/17(木) 09:47:45.52 ID:LjwDMhJOo
紬「うっ……うぅ……」

紬は泣いていた。両親が死んだ夜以来、涙は出ていなかった。あの日、全て枯れ果てたと思っていた。
だが、涙が止まらない。悔しいのか、悲しいのか、わからない。だが、何もかもを失った気がした。
自分の信じていた世界が、何もかも崩れ去ったかのようだった。

紬は立ち上がることすらできず、その場で這い蹲って泣いた。惨めだった。
そんな惨めな姿こそが自分の本当の姿で、自分はその程度の価値しかないのだと、思い知った。

少年「おねえちゃん、おなかいたいの?」

顔を上げると、小汚い少年が前に立っていた。周囲を見ると、路地のどこかしこにボロ切れを着た人々が座り込んでいた。
皆、目に生気が無い。人生の何もかもに絶望しているかのようだった。

少年「大丈夫?」

紬「ええ、ありがとう」

少年は紬の体を支え――すぐに放した。
紬の体が再び地面にたたきつけられる。

少年「まいどあり」

少年は紬の財布を手に満面の笑みを浮かべていた。

紬「どうして……」

少年「この国は金持ちにばかりお金が入ってくるんだろ? なら俺たちに分けてくれてもいいじゃん。じゃあね、お金持ちのお姉ちゃん。そこで這いつくばって、あとで警察にでも泣きつけばいい。まあ、警察が『黄金(ゴールド)』の仕切ってるこのストリートに来るわけないけどね」

紬「……どうして」

少年「さっさと帰ったほうが良いよ。ほら、みんなあんたの腕時計や服を欲しがってる。このままだと、丸裸だけじゃすまないね。内臓もとられるかも。ここでは死体なんて発見されないから、誰も殺しを躊躇したりしないしね」

紬「……どうして」

少年「どうしてって、そりゃあ、みんな金持ちを憎んでるからさ。お姉ちゃんのこと、[ピーーー]だけじゃ物足りないと思ってる奴もきっといるんじゃないかな。ま、俺はこのへんでいくよ、じゃあね。運がよければまた会えるかもね」

少年はそういって姿を消した。
そして、周囲の人々が殺気づく。

――腕時計は俺のだ。
――俺は靴。
――俺はレイプできればそれでいい。

そんな会話を小声で交わしていた。

紬(ここで、終わり……?)

何もかも、終わりなのか? 何も成せないまま、全て終わってしまうのか? 価値の無い人間の価値の無い人生のまま、なにもかもが。

紬(いやだ……!)

――そうだ、こっちだ紬。自分の足で歩くんだ。

紬(お父様、私は……!)

――紬、人間は強い。たくさんのことを、自分で変えていけるんだ。

紬「私は、生きる……!」

紬は立ち上がった。自らの意思で。
貧民街の暴漢立ちが迫る。だが、紬は絶望してはいなかった。

紬「生きて見せる。自分にできるなにかを成し遂げるために……!」


そして。


数時間後、ボロボロになった紬がそこにはいた。
だが、立っていた。ナイフを突きつけられようが、殴られようが、蹴られようが、紬は立ちあがり、そして暴漢たちの手を逃れ、立っていた。
逃げることしかできなかった。
だが、今は弱くても、これから変えていくことが出来る。それが人間だ。

紬「……強くなる。強くなって……変えて見せる。この世界を」

そうつぶやき、紬は夜の街に消えていった。


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