過去ログ - 紬「タックマン?」
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57:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[sage saga]
2011/03/19(土) 06:16:39.13 ID:whhP9ezKo
憂(紬さんのことはまだみんなに言ってない。本当に来てくれるかもわからないし……)

憂は迷っていた。紬が戻ってきたこと。それがおのおのにとってどういう意味をもつのか、それは本人にしかわからないのだ。
悲しいことなのか、嬉しいことなのか。
だが、確信もあった。少なくとも、それは唯にとってはこの上なく嬉しい出来事なのだ。
たとえ琴吹紬がどう変わっていようと、唯を拒絶しようと、関係ない。唯は紬が今生きている、その事実を自らの目で確認できるだけで良いのだ。
仲間がたとえ自分を嫌っても、拒絶しても、唯は愛することを止めはしない。好きになることを止めはしない。
自分の好きな人にどれだけ嫌われようと、きっと唯はその人を好きで居続けるだろう。
唯にとって、好きということは、愛するということは、そういうことだ。

憂(それはきっと悲しい生き方。だけど、お姉ちゃんにしかできない生き方だから……)

唯はいろんなものを好きになってきた。たくさんの『好き』を抱えて生きる人間だ。
そしてその『好き』という気持ちに疑いを持たず、ただまっすぐに走り続ける。自分自身の心を歪みの無い姿勢でうけとめる。
それは多くの幸せを唯にもたらし、唯は周囲にたくさんの幸せを振りまける人間になった。
だが、そんな生き方はよいことだけではない。
唯には多くの不幸が降りかかった。世界中の誰もが抱えきることの出来ない『業』を抱えている。

誰かに嫌われたとき――その人が、自分の大切な、大好きな人だったとき。人は、どうするか。
多くは、その人を嫌いになってしまう。嫌いになることで、心の平静を保つ。
だが、唯はそれをしない。できない。
自分を嫌う人間すら、迷い無く愛してしまう。
それは、どれだけ辛いことだろう。憂には想像もできなかった。
唯はまっすぐに生きている。それは、一見単純に見えるが、何よりも難しい生き方でしかなかった。
だから憂は、そんな姉を愛した。世界中の人間が唯を嫌おうと、たとえ唯が憂を嫌い、傷つけることになっても、未来永劫愛し続けることを誓った。
唯は人を愛し続けることができる。こんな時代に、愛することをやめない。『唯一の』人間だろう。
だから憂はそんな唯の未来を『憂い』、唯を支え続ける。

そうやって二人は生きてきた。これまでも、そしてこれからも。
だから、憂は決意していた。

憂(もしも、紬さんがお姉ちゃんを傷つけたら……それでもお姉ちゃんは許すだろう。でも、私は――)

――私は、紬さんを許さない。

人を許し、愛することしかできない唯の代わりに、自分の手を汚そう。
そう、決意したのだった。


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