94:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[sage saga]
2011/03/22(火) 05:29:46.85 ID:A0O8EXjso
日本 琴吹邸
斉藤「お嬢様、お体の調子はいかがでしょうか」
紬「斉藤」
斉藤「どういたしました?」
紬「私、強くなった気がしていたの。この二年戦い続けて、タックマンという鎧を着て、変異種と戦って、勝って」
斉藤「ええ、お嬢様はとてもお強くなられました」
紬「でも、実際は違った。あの時と同じだったの……。復讐心や怒り、制御できると思っていた自分の心に勝てず、今なら勝てると思っていたあの男――黄金に、手も足もでない。私は、自分自身にも、倒すべき敵にも勝つことができない。あの時と同じ、弱くて、惨めな姿が私」
斉藤「……」
紬「タックマンはいつかヒーローになれる。そううぬぼれていたこともあった。でも違った。タックマンという仮面を被っても私はまだ私のまま。タックマンはヒーローにはなれないし、この街すら変える事もできない。そして今、世界の命運がかかった戦いを始めてしまった。この街すら戦えない私が」
斉藤「お嬢様は、止めたい、とお考えですか?」
紬「わからない。自分自身のことすら、わからないの。タックマンとは何なのか、琴吹紬とは誰なのか。わかっていたつもりだった、でも、今ではなにもわからなくなっている」
斉藤「……お嬢様。ご案内したい場所が」
斉藤はポケットから取り出す。
紬「それは……?」
斉藤「この鍵をお使いください。旦那様の、書斎の鍵でございます」
紬「お父様の?」
斉藤「私にはタックマンが何者かを決めることはできません。お嬢様のお心を全て知ることもできません。これは、お嬢様にしか乗り越えることのできない問題です。私は、その手助けをするだけです」
紬「斉藤……」
紬は立ち上がる。すかさず斉藤が体を支える。が、それを紬はそっと制した。
紬「大丈夫よ。私は、自分の足で立って歩ける」
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