過去ログ - 唯「いでおん!」
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2: ◆INjIt6nmxE[sage]
2011/03/17(木) 11:09:37.59 ID:DI7Rv+qu0

それは、唯が高校2年生の夏休み中、8月1日の事だった。

昼食を食べ終えて、うだるような暑さの中、扇風機に体を預けて宿題なんてする気にもなれず、居間でごろごろしていた。
しばらくぼーっとしていると、折角の夏休みだからどこかに出かけたい気分になり、気がつくと唯は着替えて外へ繰り出していた。
しかし、唯は外に出てから1分もしないうちに後悔していた。
「あっつぅい……」
暑いのが苦手なのをよく知っているのに、なんで出てきたんだろう。
しかも、一番気温が高いこの昼下がりに。
唯は不思議に思っていても、外を歩くのをやめない。
何かが唯の足を動かすような、そんな気がするのだ。
「……せっかく出てきたんだしね」
この暑い中をわざわざ出てきたのに、何も無かっただなんてちょっと寂しい。というか悔しいので、何か見つけてやろうと唯は躍起になっていた。
そんなことを考えながら歩いていると、住宅街を抜けたらしいのか緑が目に付く様になった。
「おぉ、こんなところがあるんだ」
いつもの通学路から少し逸れてみるだけで、風景がぐっと変わってどこか知らないところへ来た気分になる。
「ふふふ……」
辺りを軽く見まわしてみたり、歩道の白線を踏みながら歩いていると、今まで続いていた家が途切れて緑だらけになる。
「おぉ……」
最後の家の隣は大きな雑木林が広がっていた。
公園なのか私有地なのかよくわからないが、人が通るようで草が生えていない部分が見える。
「こんなところがあったんだねぇ……」
高校生になっても、こういうところは妙に好奇心をくすぐられる。
唯は道を覗き込むようにして中を観察してみる。
緑の光がさんさんと射し込み、奥に道が続いているようだ。
「……」
さわさわと体を撫でていく風が火照った体に気持ちいい。
(……入ってみたい)
不意に唯はそう思っていた。
吸いこまれそうな緑と、風が唯を呼んでいるようだった。
「……よし!」
好奇心に後押しされ、唯は一呼吸置くと雑木林へ入っていった。
さう……、さう……。
雑木林の中を進むたびに、草木が独特な音で歓迎してくれる。
「うぅ〜……ん。気持ちいい〜」
雑木林の中は日差しも弱く、涼しい風も吹いていて快適だった。
唯はさらに嬉しくなって、少し速足で進んでいく。
「……おっ?」
数メートルも歩くと、急に目の前が開けてきた。
どうやらここだけ木が生えておらず、広場のようになっているみたいだ。
「これは……やらなくちゃいけない気がする!」
唯はうずうずと体を震わせて、そいやっと草の絨毯に寝転んだ。
「はぁ……」
さわさわ……。
風が木々を撫で、唯の体も包み込んでいく。
自然の流れに身を任せて、日差しと風と草の匂いを感じていた。
「……」
緑の優しい木漏れ日は体をやんわりと温め、うるさいセミの声ですら遠くなって意識の奥底を揺すらない。
自然と瞼は落ちて、唯の意識は地と一つになっていた。


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