22: ◆INjIt6nmxE[sage]
2011/03/20(日) 22:14:39.35 ID:K1QSspJ60
黒い煙が夜空を覆い、その中をキラキラと光る何かが飛んでいる。だが、それもぱっと小さな火花のように散っていく。
暑さのせいだけではない汗が、唯の体を濡らしていくのがわかった。
「住民の皆さんは至急、避難をお願いします! 住民の皆さんは! 至急、避難をお願いします!」
町の中から緊張を孕んだ放送が流れ、それが耳を抜けて一気に頭をかけ上り、唯の体を強張らせる。
「ど、どうしよう、お姉ちゃん……!」
「と、とりあえず避難しよう。憂、着替えとか準備して!」
「う、うん!」
幸い、唯の着替えは合宿へ行く用意をそのまま持ち出せばよかった。
憂の方は、事あるごとに唯の身支度を手伝っているので荷物をまとめるのにさほど時間はかからなかった。
「お姉ちゃん! 準備できた!」
「よし、とりあえず学校に行こう。あそこ避難所になっているはずだし……」
ギー太を背負い、右手には着替えを詰めたスーツケースを持って避難をする人の列に加わる。
「唯ちゃん! 憂ちゃん!」
「おばあちゃん!」
「2人とも大丈夫!?」
「うん。よかったぁ……」
とみの元気そうな顔を見て、唯は一安心した。
「おばあちゃん、何があったかわかりますか?」
「私も状況がわからないから、憂ちゃんに聞こうと思っていたんだけど……。わからないみたいね」
「お姉ちゃんと逃げ出すのに必死でしたから……」
遠くから聞こえてくる衝撃音と破裂音に怯えながら、憂が早口で言う。
「さぁ、早く非難しましょ」
「はい」
唯はとみの手を引いて、避難する人の列に加わった。
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