過去ログ - 唯「いでおん!」
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23: ◆INjIt6nmxE[sage]
2011/03/20(日) 22:16:35.20 ID:K1QSspJ60
「……」

誰も話さない。

だが、時々足元を揺らす轟音が嫌な声を漏らさせる。

唯も憂も話すことが全く思いつかず、ただ人の流れに身を任せて桜が丘高校へ向かう。

嫌な空気が流れていた。

人の臭いと、炎が焼いた何かの臭いと……。

(まだここら辺は大丈夫そうだけど……)

先程の光景を思い出し、唯は今すぐにでも走り出したい気分だったが、それも次第にしぼんで潰れた。

そんなことをしても、何にもならない。

何にもならないのだ……。

「和ちゃん、心配だね……」

不意に憂が口走った。

「えっ? あぁ、そ、そうだね」

家が近いはずだが、唯はまだ和の姿を見ていなかった。

それより、唯は和のことが全く頭になかったことに驚いていた。

現実に押し流されるように家を出てきたため、誰を見ていないかなど気にかける余裕もなかったのだ。

(みんな、大丈夫かな……)

酷い無力感が漂っていた。

「ゆ、唯……、唯!」

「はっ! りっちゃん!」

しばらく歩いていると、人の列の間に家族と並んでいる律と澪がいた。

「3人とも無事だったんだな……!」

澪が泣きながら唯と憂を抱きしめる。

「りっちゃんも、澪ちゃんも……」

「あぁ! これから学校に行くんだろ?」

「うん。あっ、ムギちゃんは……」

「まだ、見つけていないけど学校に行ったら会えるだろう」

律がいつになく震える声で言った。

「そっか。そうだよね……!」

心臓が嫌に跳ねたが、唯も律の言葉を信じ学校を目指して歩くことにした。


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