過去ログ - 唯「いでおん!」
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38: ◆INjIt6nmxE[sage]
2011/03/27(日) 16:21:57.73 ID:8NE1MY6N0

「ぐすっ……、すぅ……」

頬に光る跡を残したまま寝ている憂の頭を撫でながら、唯は辛かった。

(……あずにゃんが、バッフ・クラン)

自分たちの町を焼き、何百人もの人を殺した者と仲間である……。

それだけで、私達を助けてくれた人の命を奪いたいと思えるほどの理由になるのだろうか。

(……なってしまったんだよね。憂はやさしいから)

あれだけ激昂する憂を、唯は見たことがなかった。

「ごめんね、憂……。私の為にしたんだよね……」

しばらく憂の頭を優しく抱いて、唯は守衛に礼を言って鍵を渡してから独房を後にした。

広い通路を歩いていると、和が心配した顔でやってきた。

「和ちゃん……」

「唯。憂のほうはどう?」

「だいぶ落ち着いてきて、今は寝ているよ」

「そう……」

「ごめんね。憂がこんなことをしちゃって……」

「こういう状況だからね。誰も責められないよ……」

梓達が使用していた宇宙船、ソロ・シップに地球人が当然ワープし、挙句の果てに制御を受け付けず勝手に亜空間飛行を始めてしまっているのだ。

穏健派のバッフ・クランも困惑し、原因もつかめずお手上げ状態なのだ。

「それに、このソロ・シップにいる人たちで生き抜かなきゃいけないんだから……」

和はこれからのことを考えると、気持ちが滅入ってしまった。

「でも、憂はこれでよかったの?」

唯がひやひやしながら聞いた。

「梓ちゃんだっけ? あの子がそれでいいって……」

無抵抗な相手に発砲までして、独房で反省だけで済んでいるのだから奇跡ともいえる。

これも、梓が進言してくれたおかげであった。

これだけの被害を受ければ憎むのも当然だと……。

「でも、憂の言うこともわかるわ……」

和は苦い顔をして言った。

「あの人たちが来なければ、こんなことにはならなかった。それは事実なのよ」

「そんなこと言わないで……。あずにゃんだって、こんなこと望んでなかったはずだよ」

「それはわからないわ……。彼女は異星人で、私達と同じ考えなのかすらわからないんだから」

「それは……」

攻撃を仕掛けてきた人と仲間だったと知れば、疑いの一つも持ってしまう。

「……それでも、私はあずにゃんを異星人と思えないの。信じてみたいの」

唯の真摯な態度に、和は少し頬を緩めた。

「……そう。なら、私は止めないわ。それが正しいのか、間違っているのかはまだわからないものね」

和は優しく言うと、唯の肩を叩いて部屋へ戻っていった。


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