39: ◆INjIt6nmxE[sage]
2011/03/27(日) 16:22:45.12 ID:8NE1MY6N0
和と別れた後、唯は梓を探していた。
謝罪でも、慰めでも何でもいいから梓に声をかけたかった。
人伝いに聞いていくと、梓の部屋を見つけるのはそれほど難しくなかった。
「ここか……」
プラスチックのようなものでできている質素なドアだった。唯は軽くノックをしてみた。
「あずにゃん、いる?」
「……唯、ですか?」
閉められたドアの向こうからかすかに梓の声がした。
「うん。話があってきたんだけど、入っていい?」
「今は……、ダメです……」
ドア越しでも、梓が必死に息を詰まらせているのが唯にはわかってしまった。それを思うと、胸が苦しくなる。
「……でも、ちゃんと顔を見て言いたいの。あずにゃんのこと、心配だから……」
しばらくの沈黙の後、ゆっくりとドアが開いた。
「さっきは、ごめんなさい。憂があんなことを……」
「唯は悪くないです……」
そう言う梓だが、目は赤く腫れて頬にはまだ光る跡が残っていた。それを見て、唯は本当に痛ましく思えた。
「あの、入っていい?」
「……どうぞ」
しばらく悩んでから、梓は唯をうす暗い部屋の中に通した。
椅子に座るように促され、唯はベッドのわきの椅子に腰かけた。
「あと、ありがとうね。憂のこと……」
「……あれは、憂の言うとおりです。私達のせいで、ここはめちゃくちゃになってしまった……!」
ベッドに沈み、梓は言った。
「あずにゃんのせいじゃないよ」
「でも、私達が……、原因をつくってしまった……」
拭っても拭いきれないぐらい涙が溢れ、梓の言葉は嗚咽に変わっていった。
「あずにゃん……」
「ごめんなさい……! 私、どうしていいかわからないんです……!」
「……!」
唯は堪え切れなくなって、梓を抱き寄せた。
「ゆ……、唯……?」
梓が胸の中でくぐもった声を漏らす。
「……大丈夫だよ。私はあずにゃんのこと嫌いになったりしないから」
「……私、敵の女なんですよ?」
「私にとっては、あずにゃんはあずにゃんだよ。それは変わらないよ……」
しばらく黙っていた梓は、ゆっくりと唯の背中に手をまわしてきた。
「……ありがとう」
それだけ言うと、梓は唯の腕の中でしばらく声を押し殺して泣いていた。
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