44: ◆INjIt6nmxE[sage]
2011/03/27(日) 16:30:15.73 ID:8NE1MY6N0
「ダメです! お嬢様、おやめください!」
「私だって、ただのお飾りではないのです! 1人でも戦力が多いほうが……!」
「だからと言って、あなたが行くことはありません!」
斉藤も引きさがらず、紬の前に立ちはだかる。
「黙りなさい!」
紬のあまりにも強い言葉に斉藤は口をつぐんでしまった。
「……もう、個人の生き死にの問題ではないのです」
なおも引きさがらない紬の前にさわ子が立つ。
「さわ子先生……」
引き留めても無駄だと眼で訴えかけると、さわ子は真剣な眼差しで問いかける。
「どうしても行くのね?」
「……はい」
紬は力強く頷いた。
「そう。……でも、独りでは行かせないわ」
ぐっとさわ子が紬の肩を抱く。
「……いきましょう」
「!? ……はい!」
「ちょっと、先生!」
斉藤がさわ子に食ってかかった。
「先に行って。後から行くから」
「はい!」
紬はそのまま格納庫へ走っていった。
「どういうつもりなんですか!」
「斉藤さん。行かせてあげてください」
「あなたは子どもを戦場に出して、何とも思わないんですか!?」
「そんなわけないでしょう!?」
「なら、なぜ!?」
ぎりぎりと迫る斉藤に、さわ子は吐き出すように言う。
「……ムギちゃんも、いや、紬さんも言っていたでしょう。もう、個人の生き死にの問題ではないと」
「だからって……!」
斉藤がさわ子の胸倉を掴んで詰め寄った。
「せ、先生……」
しかし、さわ子の体が震えるのを見止めると斉藤は少し手を緩めた。
「私だって、あの子の代わりに行けるものなら行ってあげたいわ……!」
悔しそうに、本当に悔しそうにさわ子は涙を流して歯を食いしばっていた。
「一目散に戦って、あなたたちを守ってあげるって言ってあげたいわよ……。でも、あれは子どもにしか動かせないのよ!」
「……」
重機動メカを動かすのに必要な力が、子どもの方が強いことは斉藤にもわかっていたことだった。
だが、これだけは最後の手段として認められるものではない。だから大人たちは口外していなかったのだ。
「……私達ひとりひとりができる事を精一杯するしかないんです」
斉藤は、もうさわ子を問い詰めることはしなかった。
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