過去ログ - フィアンマ「これがあの男が命を懸けて救った世界、か」
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(福岡県)
[sage saga]
2011/08/26(金) 23:08:32.50 ID:QED9L2bao
「ごッ!?」
防御術式は、かろうじて間に合った。
しかしその上から、十分過ぎるほどの衝撃が彼を撃ち抜いた。
眼前に構えたコリシュマルドが叩き折れんばかりにしなり――彼の後方に大きく吹き飛ぶ。
そのまま彼も紙屑のように吹き飛ばされて、雪の上を転がった。
「ぐ、あ、ああああああああ!!」
剣を持っていた右の手首は不自然な方向に曲がっているが、それでもかろうじて五体満足。
だが、それだけだ。
「く、そ」
立ち上がろうとしても力が入らない。足が冗談のように震える。
本当に折れたのは右の手首だけなのか、それすらも判然としないほどの激痛。
視界の奥に彼女を攫った『木馬の船』が見えるが、そこに至るまでに数多の同じ霊装が彼を阻む。
対して、彼の手には武器すらない。それ以前に立ち上がることすら満足に出来ない。
こんな状態で、これだけの霊装を掻い潜って、彼女を助けることが可能なのか。
現実的に考えて、それは確実に不可能だ。
だが、彼の思考はそこまで結論を出しても、愚かなことにその願いを捨てることが出来ない。
彼女の信頼を裏切ることが出来ない。その思いに背を向けられない。
故に、一度逃げて態勢を立て直すという選択肢すら、彼は選ぶことが出来ない。
砲門がこちらを向く。
青年は呆けたようにそれを見る。
視界を染める色は、漂白したかのような白。
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