過去ログ - フィアンマ「これがあの男が命を懸けて救った世界、か」
1- 20
225:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県)[sage saga]
2011/08/26(金) 23:08:32.50 ID:QED9L2bao

「ごッ!?」

 防御術式は、かろうじて間に合った。
 しかしその上から、十分過ぎるほどの衝撃が彼を撃ち抜いた。
 眼前に構えたコリシュマルドが叩き折れんばかりにしなり――彼の後方に大きく吹き飛ぶ。
 そのまま彼も紙屑のように吹き飛ばされて、雪の上を転がった。

「ぐ、あ、ああああああああ!!」

 剣を持っていた右の手首は不自然な方向に曲がっているが、それでもかろうじて五体満足。
 だが、それだけだ。

「く、そ」

 立ち上がろうとしても力が入らない。足が冗談のように震える。
 本当に折れたのは右の手首だけなのか、それすらも判然としないほどの激痛。
 視界の奥に彼女を攫った『木馬の船』が見えるが、そこに至るまでに数多の同じ霊装が彼を阻む。
 対して、彼の手には武器すらない。それ以前に立ち上がることすら満足に出来ない。
 こんな状態で、これだけの霊装を掻い潜って、彼女を助けることが可能なのか。

 現実的に考えて、それは確実に不可能だ。
 だが、彼の思考はそこまで結論を出しても、愚かなことにその願いを捨てることが出来ない。
 彼女の信頼を裏切ることが出来ない。その思いに背を向けられない。
 故に、一度逃げて態勢を立て直すという選択肢すら、彼は選ぶことが出来ない。

 砲門がこちらを向く。
 青年は呆けたようにそれを見る。

 視界を染める色は、漂白したかのような白。





<<前のレス[*]次のレス[#]>>
414Res/270.92 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice