過去ログ - 俺の妹がこんなに可愛いわけがないSSスレ Part.9
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VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(福井県)
[sage saga]
2011/03/27(日) 22:04:20.64 ID:VzcOF4WKo
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「オーディション……ですか?」
翌日、俺は事務所の会議室を借りて、加奈子と一対一の打ち合わせを行った。
前日に作った資料を加奈子に手渡し、内容を説明する。
「ええ。アマチュアの人たちを対象としたものが多いですが、芸能プロや事務所に所属している人でも受けられるものって、結構あるんですよ」
そう、俺が考えた策は「オーディションを受ける」ことだった。
芸能プロ主催のタレントオーディションなどは、一般人でも知るところだろう。
今回加奈子に出場を提案したのは、すでに芸暦のある人間でも受けられる、歌手のオーディションだ。
合格すれば、著名な音楽プロデューサーの支援を受けてCDデビューも果たせる。加奈子の夢である「アイドル」の第一歩を踏み出せる可能性があった。
「うまくいけばCDデビューも出来ますし、審査員に実力を示せば、そこからアイドル活動を始めるきっかけにもなると思いまして……」
俺の説明を聞きながら、加奈子は資料に目を通していた。
オーディションへの出場は、本人の了解が無いと出来ないことだが……。感触は上々と言えよう。
「ここで来栖さんに新たな価値を付加すれば、今後の活動にもプラスになります。どうですか?」
「そう、ですね。良いと思います。元々、私はアイドルを目指していましたから……」
資料に目を通し終えた加奈子は、俺の顔を真っ直ぐ見つめてきた。
「最近お忙しそうだったのは、これを調べるために?」
「そうですね。来栖さんの実力は理解してますし、これを機に単独でのテレビ出演も出来るようになるのではと思いまして……」
「あの……。それ、どういう意味ですか?」
「え?」
加奈子の質問の意味が理解できず、俺は間抜けな声を上げてしまった。
その加奈子はと言うと、席を立ち、俺を見つめていた。だが、その瞳の色は冷たい。
「オーディションのお話はわかりました。けれど、単独出演というのは、どういう意図を持っておっしゃったんですか?」
「いや……あの……」
「はっきり言いなさいっ!!」
「はいぃぃぃっ!」
加奈子の剣幕に圧され、俺は今回の話を持ってきた経緯を全て話した。三つも年下の女の子に負ける俺、マジカッコワルイ。
加奈子はその話を黙って聞き、全てを話し終えた後、ふぅ、と息を吐いた。
「高坂さんが元気が無かった理由って、こういうことだったんですね」
「黙っていたことは謝ります。ですが、これは俺の仕事です。来栖さんにお話して、無用な心配をかけるのは……」
パァンッ!
会議室に、乾いた音が響いた。
左の頬が熱い。口の中に鉄の味が広がる。
唇を指でなぞると、ヌルッとした赤い液体が付着した。そこで俺は、加奈子に頬を叩かれたのだと理解した。
「……けんな……」
左頬を押さえ、加奈子の顔を見た。
彼女は歯を食いしばり、憤怒の形相をしていた。こんなに怒っている加奈子の姿見たのは初めてだ。
そして目には、大粒の涙が浮かんでいた。
「っざけんなっ!なにが心配かけたくねえだっ!加奈子のこと馬鹿にすんのも大概にしろっ!!」
加奈子は昔の口調で、声を荒げて、俺を罵倒した。
俺はただ黙って、それを見ていることしか出来なかった。
「糞マネ、言ってたよな。加奈子たちはパートナーだってよ。そのパートナーに黙って、一人で勝手に動いてよぉ。それで上手くいって、加奈子が喜ぶとでも思ったのかよ?」
「お、俺は……」
「っせえ、しゃべんな!」
目から涙が溢れ、メイクが流れ落ちる。
美しく飾った顔のことなど気にせず、加奈子は続けた。
「パートナーってのは、お互いに信頼してないといけないんじゃねえのかよ。それとも何か?そう思ってたのは加奈子だけで、お前は加奈子のこと信頼してなかったのかよ!」
「違う!俺は……!」
「違わねえだろうがっ!加奈子に隠れてコソコソして、心配しても気にも留めねえ!これで『信頼してる』なんて言われても、信じられるわきゃねえだろうがっ!!」
加奈子はハンカチを取り出し、涙を拭いた。
白いハンカチは、マスケラごと目元を拭ってしまったので、黒く汚れてしまった。
「……少し、外します」
加奈子はそれだけ告げると、顔を隠しながら会議室を出て行った。
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