過去ログ - 俺の妹がこんなに可愛いわけがないSSスレ Part.9
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888: ◆Neko./AmS6[sage saga]
2011/05/03(火) 20:30:31.89 ID:fK0gY2ago

俺は、大学を卒業すると同時にあやせと結婚した。
あやせにとっては学生結婚になっちまったが、彼女がそれを強く希望したんだ。
頑張ろうと思った。あやせのためにも、そして、俺なんかのために骨を折ってくれた
親父さんのためにも。……しかし、現実はそう甘いもんじゃなかったよ。

あやせの親父さんが東奔西走して、やっとのことで紹介状を書いてくれたその会社は、
某一流企業の関連会社の下請けと取引のある、社長を含めて社員三人の小さな会社だった。
その会社にとって、俺は数年ぶりの新入社員だということで大歓迎された。
社長さんは奥さんの尻に敷かれ、いつも怯えているような人だったけど、
俺を家族の一員のようにして温かく迎え入れてくれた。
たしかに、社長以外は専務の奥さんと経理部長の娘さんだけなんだから、
俺以外は家族ってわけなんだよな。

会社勤めを始めて一ヶ月なんてもんは、瞬く間に過ぎちまう。
初めての給料日、俺はあやせに何か買ってやろうと思い、朝から落ち着かなかった。
あやせもご馳走を作って待っていると言って、俺を笑顔で送り出してくれた。
片道一時間の自転車通勤、その日の朝は、ペダルを踏む俺の足も軽かった。
いつものように朝礼を終えて書類を確認すると、俺は取引先へと向かった。
俺はこの会社で初めての総合職として、毎日靴の底をすり減らして営業に駆けずり回った。

「ご契約の条件と内容は、これでよろしいでしょうか。
 ……それでは、今後とも当社をどうぞよろしくお願いいたします」

この会社に入社して、初めて契約が取れた瞬間だった。
すぐにでもあやせに電話してこの喜びを伝えたかったが、俺はぐっと我慢をした。
こんなことくらいで有頂天になってちゃいけねえ。
この先も一件でも多く契約を取って、あいつを幸せにしてやらなくちゃ。
俺は胸ポケットに入れた携帯をスーツの上からギュッと押さえ、次の取引先へと急いだ。


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