101:>>1[saga]
2011/04/17(日) 23:03:23.76 ID:Bd6jhPdD0
少し春野は躊躇していたようだが、別に話しちゃいけないという事でもないと思ったのか俺に向き直り、俺を指差しながら言った。
「初めに言っておくけど、これで秋川君をからかったりしちゃダメだよ」
「俺はそんなことする風に見られていたのか? 春野」
割と傷ついた。そんなまるで俺を紛糾するように言わなくてもいいと思うが。
「……あ、と。ごめん」
我に帰ったのか春野は指を引っ込めて、コホンと咳払いをする。
「そうね。秋川君は……雪花をスケッチしていたのよ」
「スケッチ?」
それぐらいならしてもおかしくはないと思ったが、すぐに考えを改める。
何か深い意味がありそうだ。恐らくは、純粋に描きたくなったんじゃないだろうか。そのシーンを、とどめておくために。
「彼女の寝姿をね。夕暮れ時で、教室がハチミツ色になっていたから絵になる光景ではあったけど。すごいのよ、彼。一心不乱に描いていたもの」
「……どう考えても、か」
決定的といえよう。ひどい出来レースだ。リスク無しの告白なんて、漫画の世界だと思っていた。
最も、それは第三者だから言える意見だ。当人達はそんなことを知らないだろう。
いや全く。先におめでとうと言いたいぐらいだ。
「で、それで良かったのか?」
元々用事なんてない。どこまで歩いてもネオンは途切れず、人も忙しそうに歩いているし、車道じゃ車がひっきりなしに走っている。
「良いんじゃない? あの子が望んでいることなら、それで」
「まぁ、いなくなってしまうわけでもないしな」
でもどうせ春野のことだ。雪花が秋川君に取られた〜などと口走るに決まっている。一週間以内に言う方に賭けてもいい。
「……それに、私もやりたいことができたから」
それは感心だ。合気道辺りをやれば、いい線いきそうな気もするが。でもどうせ武術ではあるまい。つまらんことだ。
「ねぇ」
春野はこちらに向き直り、改めて口を開いた。
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