過去ログ - 男「また、あした」
1- 20
143: ◆hwowIh89qo
2011/08/05(金) 21:05:39.03 ID:5NnwS6H/0
「当然ですけど、私、やったことないんです」
「僕もだなぁ。キスといっても種類があるわけだしね」

掌や手の甲。額や頬。目蓋なんてこともあるらしい。
場所だけでも何やら多様で、やり方についてもやはりルールのようなものがあるのだろう。

「……やってみたい、ですか?」
「冬森さんが嫌なら、僕は望まないよ。でも冬森さんがいいなら、僕はきっと求めるよ」
「そういう言い方、秋川君らしいです」

彼女はそうクスリと笑うと、一歩前に出てから僕の方へと向き直る。

「ねぇ。秋川君。今日もジュピトリスに行きませんか?」
「そうだねぇ。アップルパイとかいいね。紅茶といっしょにさ」
「いいですよね。アップルパイ。リンゴをシロップで煮ているんですから、どうしたって美味しくなるんですよね。
 パイもサクサクで。そこに紅茶の香りともなれば」
「そうだね、ジュピトリスは暖かいだろうし。行こうか」

さて。この木星船団のような名前の喫茶店に僕らが入り浸るのには理由がある。
何も僕らがロボットアニメファンというわけではなく、単純にこのお店が出す各種お菓子が美味しくて学校から近いところだ。
他のお店、例えば和菓子の“風鈴堂”なんかは飲食スペースがないからいけないし、スイーツバイキングの“シュライン”なんかは遠すぎる。
よって、“ジュピトリス”に入り浸るようになったといったところだ。

ジュピトリスでは、なるべく人目につかない、奥まった席が僕らの指定席と化している。
この、程ほどに人目を気にした態度が僕ららしくていいと思う。例え、僕らの関係が公然のものであったとしてもだ。
席について、木星帰りの人らしい店長にアップルパイと紅茶を注文する。
ここのアップルパイは、シナモンが絶妙のバランスで振りかけられているところがポイントだ。
本当に、僕達好みの味というか、余程のこだわりがないと出せないバランスを実現させている。
そして、何よりしっかりと“甘い”のも特徴だ。最近では健康志向からか“あんまり甘くない”お菓子が流行っているらしいのだが、そんなものは紛い物だ。
誰もが夢見た甘いものであるから夢が詰まっているというのに、余計なお世話である。


<<前のレス[*]次のレス[#]>>
223Res/233.21 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice