163:まるで幻のよう10 ◆hwowIh89qo
2011/09/09(金) 21:16:41.97 ID:uH8thC/k0
しばらく歩いて、立ち止まり夜空を見上げる。今夜は月が大きく丸く見え、星空が広がっていた。
まるで現実感がない。それこそ、幻のようだ。確かな充足感を抱きながらも、今が現実だとは思えない。
俺と春野では不釣合いが過ぎる。彼女には、もっと相応しい男というものがあるはずだ。
恋は盲目とはいうものの、俺の何がいいのかわからない。
当然、嬉しくはある。彼女のことを気に入り、好きでさえある。全てが充足している。
それでも……いや、それだからこそ、いまいち現実味が感じられない。宙に浮いているような気分だ。
……慣れの問題だろうか。
――まぁ、いいか。
考え事は得意ではない。答えが出てこないなら、しばらく考えても同じだろう。
それならば、あれこれ考える前に身体を動かすほうがよほど建設的だ。
家まで離れてしまっていることだし、ジョギングには丁度いいぐらいだろう。
「……ま、また、あしたってところだろうな」
考えたり悩んだりするのは、一旦落ちついてからでもいい。
俺はそう一人頷いて、満天の星空の下、駆け出した。
――不思議と、満ち足りたような気分だった。
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