59:>>1[saga]
2011/04/01(金) 21:11:05.17 ID:OpoHLyR10
「耳が聞こえませんか? 僕の連れだと言ったんですよ。だからその汚い手をどかしたらどうです?
日本語わかりますか? わかりませんね、だかわわかるように言ってあげます。さっさとどこかへ行けと言ってるんですよド低脳」
今まで使ったことのない、汚い罵詈雑言の類。聞き慣れてはいるが、言うのは思えばひどく久しぶりな気がする。
噛むこともせず、自分でも驚く程すらすらと言葉が出た。僕よりも驚いたのは彼らだ。明らかにひ弱な目の前の人物が、思い切り挑発してきている。
今までにない経験だったはずだ。
だからだろう。冬森さんの肩を掴む一人の腕の力が緩んだのを僕は見逃さなかった。冬森さんを強引に突き飛ばし、逃げるように促した。
でもできたのはそれだけだ。冬森さんが路地から出られたのかどうかわからないまま、僕は気づいたら地に伏していた。
何か聞こえるが、それ以前に身体を打つ音の方が大きいので聞こえやしない。
全身が痛いおかげでどこが痛いのかわからず、そもそも痛いってなんだとゲシュタルト崩壊する勢いだ。
視界は黒いのか赤いのか。とりあえず、まともな景色が見えていないことは確かだ。
自分がここまで冷静に見えているのが不思議なぐらいだが、多分意識が遠いか、すでに抜けてるんじゃないかな。
ひどいもんだ、立ち往生したかったのに、有無を言わさずに倒してくるなんて。
「そこまでにしておけよ。そんな柔らかいのをサンドバッグにしても強くなれんぞ。ちょうどよく、ここに対戦相手がいるわけだが、一つどうだ」
声が、聞こえた。低いが、よく通る、力強い声。まるで軍神のソレ。
「ああ――答えは、聞いてない」
誰だったか。顔を見ようとして、その前に、意識を手放した。
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