132:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga >>130あり得る……か?]
2011/04/26(火) 00:22:22.40 ID:qwixLUU/o
村の北。
東に見上げた日が、真上にくるまで歩いたころ。
「あれか?」
小さな山の裾に小屋を見つけた。
どう見ても職人の手が入ったようには見えないみすぼらしい作りのそれ。
風雨にさらされたためだろう、表面はくすみ傷んでいる。
そう長い間立っていたわけではないはずだ。建てて一年ももつようには見えなかった。
ノックは湿った木材によってくぐもる。
ちゃんと中にいるであろう人物に聞こえたか不安だった。
実際誰もいないのではないかと危惧したころ、だが一人の男がその薄い戸をあけて姿を現した。
「……何だ?」
平坦な声。老人特有のどこか疲れた声でもある。
いや、実際には初老ですらないだろう。推測するに四十の半ばから後半。
中肉中背、身体はどこか剣呑な緊張感に満ちている。
「フォールス・ネイムだな」
ぞんざいな口調で問う相棒に対し、男は黙ってしばらくこちらを眺めた。
彼の眼球はあまり動かない。ガラス玉のように生気がなく、静かな水面のように揺らぎがなく。
「……そうだ」
彼の肯定の声もまた、死者のごとく静謐だった。
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