186:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2011/05/11(水) 19:52:21.45 ID:lSgkn7ERo
昼下がりの日の下、露店で買った焼き菓子をぽそぽそ齧りつつ人々の間を縫い歩きながら。
クリアは恐る恐る隣を見上げた。
少女とは違って背の高い女だった。見たところ頭一個分ほど背の差があるか。
「……」
クリアは少し考え、違うのは背の高さだけではないな、と思い直した。
自分はあんなに明るく微笑まない。
「おいしい?」
急に問いかけられ視線が合う。クリアは慌てて目をそらして頷いた。
「そう、よかった」
それはとても優しい声だったが、少女はどうにも落ち着かなかった。
確かに柔らかい雰囲気と所作だが、それでもどこか油断ならないものがあるというか。
とはいえ屋敷を出てからこのかた少女の気が本当に休まったことはない。外界へ出るのが父からの言いつけであろうとも。
一人でいれる時間は貴重だ。その間だけは見知らぬ土地だろうとある程度は落ち着ける。
「人の多いところは苦手? 表情硬いわよ」
考えを読まれたようでどきりとした。
くすくす笑いの気配を感じて、少女は恥ずかしさにさらに視線を伏せた。
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