3:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2011/03/30(水) 07:53:33.59 ID:9b91y1IMo
「お前って大した奴だよな」
あまり大きくもない声。うす暗くなった山中に低く鳴る。
鳴る、という表現にはとりあえず違和感はなかった。的を射ている。
それは低く唸るようでもあり、威嚇するようでもあり、さらに言えば恨めしげでもあった。
「疲れた、だあ?」
「でも、本音だよ……」
「ああ知っているとも。何せ俺も足が棒のようなんでね」
相棒の声には、ちくちくと、それでも控えめに抑えられた棘がある。
だが対応を間違えれば、それがすぐにでも心臓にまで刺さる鋭利な針になるのは自明のようだ。
小さくため息をつく。前を歩く相棒には聞こえないように。無駄な努力だと分かってはいたが。
「ほんっと、大した奴だぜ。ため息をつきたいのはこっちだってのによ」
ほらやっぱり聞こえてた。顔をしかめる。
「全く、本隊はどこを歩いてるのやら」
「分かんないよ……」
「知ってるさ」
相棒はそこでようやくこちらに振り向いた。肩越しに、顔の半分だけをこちらに。
「分かってたら聞かない」
だろうね。
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