過去ログ - まどか「もう大丈夫だよっ」まどか「あなたは……!」
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962: ◆D4iYS1MqzQ[saga]
2012/04/10(火) 23:32:18.01 ID:43co6dr4o

〜芸術家の魔女の結界内〜

足元に散らばる宝石の数を数えていた。砕け散った夢のかけらの数を。
緑色の窓枠から高い日差しが四角く差し込む。砕け散ったガラスに光が拡散されて、無数の煌めきを放つ。
壁に架かっていたはずの肖像画がベッドの下でホコリまみれになっている。椅子の足が割れて木片を散らしている。
狭いながらも一応整頓されていた室内は、原形を留めないほどに荒れていた。

しかし、それはかえって開放感のある光景だった。
寒々しい空気は陽光に照らされて温もりを帯びるようになっていた。
閉鎖的な室内に齎された破壊が、部屋を封じ込める鎖を断ち切ったのだ。

そして向かい合う二人。
同じ顔といえばまさしく同じ顔。同じ服と言えば同じ服。同じ体型に同じ姿勢。同じ声。
しかしその身に纏う雰囲気だけは、完全なる対称だった。

使い魔「!?――――――この、死に損ないの魔法少女がッ!」

使い魔「武器を封じられておきながら、よくもここまで来れたものね!」

怒り狂うニセモノ。

マミ「……銃は怖いものね」

マミ「あんな恐ろしいもの、誰かに向けたりできないわ」

それを憐れむ本物。

マミは、驚くべき精巧さを持つ自らのコピーに対して、驚くどころか初対面の反応も見せなかった。
一目見た瞬間から、これは閉鎖された室内に残された最後の遺物だと確信していた。ならば破壊するのみ。

使い魔はそれと意図せずに、マミの心の中にいる、弱く憶病な、ゆえに凶暴な、もう一人のマミを体現していた。
高い再現力が、この相対を実現させてしまっていた。マミには詳しい理論は分からなくても、対処法は分かった。

マミ「……幼いわね」

逆光の中の影がわずかに顎を下げる。四肢を縛られた使い魔を見下ろす。
使い魔はいまだに、なぜ、なぜ、を繰り返す。対して、バキッという、靴がガラス片を踏み砕く音。

マミ「物真似にしては上出来だけど、どうせならもっと徹底的にやりなさい」

それは使い魔が美しいと感じた魔法少女の姿ではなかった。
前髪のベールの隙間から見下ろす視線には、憐れみや悲しみの色を越えた、それ以上に強い、容赦のなさがあった。
使い魔を縛るリボンを絡めた両手を胸の前でクロスさせて、冷徹な敵として立ちふさがる。それはある意味優しさだった。

なぜなら、魔女にしろ使い魔にしろ、殺されない方がよほど可哀想だから。
これは新しい正義。行為としては同じでも、その理念はまったく別の方向だった。
しかし、やはり正義。マミは、今も変わらず正義の魔法少女として立っていた。

使い魔は、これもまた形は違えど、美しい魔法少女だと感じていた。ゆえに欲した。
しかし、その身を戒めるリボンの端を握りしめるマミが、口を開く。最期だった。

マミ「銃が使えないから、何だというの?」

マミ「勝手に他人のことを分かったような口聞いて」

マミ「あなたもあなたのご主人様も、何にも分かってないわね」

マミ「聞いて驚け! 刮目しなさい!」

マミ「――――私の本質は、銃なんかじゃないわっ!!」


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