過去ログ - 明るい魔まマ 魔法少女まどか☆マギカ 〜私の大切な人〜
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8:ちり紙 ◆B/tbuP0Myc[sage]
2011/04/03(日) 01:24:24.68 ID:8GUEOo26o
          ☆

 「……ふーむ。魔女と戦う魔法少女、か」
  マミから事情を聞いた芳文は腕を組みながらそう呟く。
 「つまり、巴さんが今までずっとこの街を守ってきた魔法少女で、まどかちゃんとさやかちゃんは魔法少女になれる素質がある女の子で、現在は魔法少女の研修中って所かな」
 「ええ。そうよ」
 「巴さん」
 「何かしら」
 「今までずっと一人でこの街の人達を守っててくれたんだね。本当にありがとう」
  芳文は深々とマミに頭を下げて心の底からの礼を言う。
 「ちょ、なんであなたがお礼を言うの?」
 「なんでって、当然だと思うよ。みんなが笑って暮らせる街なのは君のおかげなんだから。何度でも礼を言うよ。ありがとう、巴さん」

 「……」
  マミはくるっと背を見せると目元を擦りながら言う。
 「べ、別に、お礼を言われる事じゃないわ。それが私の使命なんだから……」
  涙声でそう芳文に返すマミを、まどかとさやかは微笑みながら見ていた。
 「そ、それであなたはどうして魔女の結界の中にいたの?」
  初めて他人に感謝された事で思わず出てきた嬉し涙を拭いて、マミが尋ねる。
 「ああ、帰りが遅くなって近道しようとしたら、今朝ぶつかった女の子達が二人だけで人気のない公園にいたんだ」
 「暗いし危ないから、おせっかいかなと思ったけど、人気のある所まででも近くで見守っといたほうがいいかなって近づいたら、君がいて急にあの結界だっけ? あの中に巻き込まれたって訳」
 「おかしいわね。普通の人間は結界の中に入れないはずなんだけど……」
 「うーん。……実は俺、霊感が強い方なんだ。子供の頃から良くない物が見えたりとかあったから、多分それでじゃないかな」
 「霊感って……そんな訳が……」
 「いや、でも実際それくらいしか思い当たる節がないし……。ところでずっと気になってたんだけど、まどかちゃんが抱いてるそのぬいぐるみ、なんか動いてない?」
  芳文の言葉に3人は顔を見合わせて驚いた表情をする。

 「あなた、キュゥべえが見えるの?」
 「キュゥべえってそのぬいぐるみの事? 結界の中でもまどかちゃんがずっと抱いてたから大事な物なのかなって思ってたけど……。なんかさっきからしっぽがぴこぴこ動いてるし。……まさか、それ生き物なの?」
 「これは驚いた。男で僕が見える人間なんて、君が初めてだよ」
 「うおっ!! ぬいぐるみが喋った!! っていうか口元動いてないし!! 何この不思議生物!!」
 「僕はぬいぐるみじゃないよ。魔法少女に魔女と戦う力を与える魔法の使者さ」
 「おお……。なるほどなるほど。……つまり、巴さん達の淫獣って事か!!」
 「……いんじゅう?」
  まどかが、聞いた事のない言葉に首を傾げて?マークを浮かべる。
 「漢字で淫らな獣と書いて淫獣。魔法少女や魔女っ娘のお供のマスコットは全部、そういう通称なんだとアニメ好きの友人が言ってた」
 「僕は淫獣なんかじゃないよ」
 「女の子と一緒に寝たりとか、一緒にお風呂に入ったりとか、着替えを見たりとか、そういったハッピータイムを体験した事が一度もないってんなら、お前さんは立派な魔法の使者だ」
 「ハッピータイムって……」
 「な、なんだかなぁ……」
 「あ、あははは……」
  マミとさやかが呆れて、まどかが困った顔で苦笑いする中、キュゥべえと芳文は無言で互いの顔を見つめあう。
 「……」
 「……」

  どれくらいの間、無言で見つめあっただろう。芳文が沈黙を破った。
 「……あるのか。じゃあ、やっぱり淫獣だな」
 「……まどか、僕この子嫌い」
 「あ、あははは……」
  そんな芳文とキュゥべえのやりとりに、キュゥべえを抱いているまどかはただ困った顔で苦笑いするだけだった。
 「ところで、君は本当に何なんだい? 魔法少女かその素質のある子にしか僕は見えないはずなんだけど」
 「さっきも言ったろ。ただ霊感が強いだけの人間だって」
 「本当に? 実は女の子とか……」
  そう言ってキュゥべえは、芳文の頭からつま先までをじろっと見る。
 「あははは、キュゥべえ、いくらなんでもそれは無理があるって」
  芳文の顔を見ながらさやかがけらけらと笑う。身長170センチくらいある男子中学生のどこをどう見たら女の子に見えるのか。黙ってさえいれば、結構整った顔立ちをしているけどとさやかは心の中で呟く。

 「……謝れ」
 「謝れ!! 淫獣!!」
 「ちょ!? 社先輩!?」
  突然激昂した芳文がまどかの腕の中から、キュゥべえの頭を鷲掴みにして奪い取り、宙づりにする。
 「君を女の子かもと言った事に怒ってるのかい? それなら謝るよ」
 「俺が怒ってるのはそんな事じゃない!! 大体こんなむさくるしい女の子がいてたまるか!!」
 「社君落ち着いて!!」
  マミが慌てて止めようとするが、芳文は激しい口調で言い切る。

 「いいか!! 女の子ってのはな、柔らかくて、暖かくて、いい匂いがして、汗臭い男なんかとは全然違う存在なんだよ!! 俺みたいなむさくるしい男を例え話でも同列の存在にするんじゃないっ!!」
 「謝れ!! 世界中の女の子に謝れ!! とりあえず、まどかちゃん達に謝れ!!」
 「……え、えーと、ごめん、まどか、さやか、マミ」
  芳文の言動に圧倒されたキュゥべえが素直にまどか達に謝ると、芳文はうむと頷いてキュゥべえを地面に降ろす。
 「え、えーと……」
  困惑するマミ達の足元にそそくさと駆け寄り隠れるキュゥべえ。
 「とりあえず、こっちの事情はさっき話した通りだよ」
  芳文は困惑するマミ達にさわやかな笑顔で話しかける。
 (……な、なんなの、この人)
  マミ達はただただ困惑するだけだった……。


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