過去ログ - 姫神「ごめんね。上条君」
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62:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県)[sage]
2011/04/23(土) 01:46:02.38 ID:BGsQlpcYo

彼女の名前に反応して体全体がビクッとして、呼吸も一瞬止まった
その瞬間から心のなかに様々な感情が流れこんできて、それらは混ざり合い大きな渦となって私の心を掻き乱し始めた。
わかっていたはずではないか。
鈍感な彼のことだから私の嘘には気がつかないと。
それにこれが会ったときに私が望んだ展開だったではないか。
そう頭では理解していた。
だけど心が納得してくれなかった。
彼の口から彼女の名前が出てくるのが許せなかった。
今は彼女の出番ではなく私の出番ではないか。

「どうして」

呟きにしてはやや声が大きく、問いかけにしては小さかった。
それは意図せずに発した言葉。
でも今の私の心情を最もよく表していたかもしれない。
そして、その声はひどく震えていた。

「どうしたんだ、姫神」

おかしな私を見て、さすがの彼でも異変に気がついたようだ。
先程と比べ声のトーンが落ちて、真面目なものになっている。
後ろを向いているからわからないが、きっと顔も声に則したものになっているだろう。

「ごめん。上条君。ちょっと一人にさせて」

まだ声は震えていた。
むしろさっきよりもひどくなったかもしれない。
捨て台詞のように言い放って、彼から逃げるように歩き始めた。
急げばまだなんとか後戻り出来る位置に私はいるはずだ。
だけどこれ以上彼と話していると越えてはいけない一線を越えてしまうような気がする。
早く、早くしないと。

「ちょ、ちょっと待ってくれ」

突然彼が私の右腕をつかんだ。
彼は私を引きとめようとしてくれたのだろう。
でも彼の手は恐らく本人の予想以上に力が篭っていて、私をひどく驚かせた。
だから私は振り向いてしまった。
あれだけ見せたくなかった私の顔を彼に見せてしまった。

「へっ?」

私を見て驚いたような声を出すと上条君は私の腕から手を放した。
その隙に私は体を半回転させて、彼から走って逃げた。
なんだか今日は逃げてばかりな気がする。


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