962: ◆YwuD4TmTPM[saga]
2012/06/26(火) 01:00:22.47 ID:g7uRISW50
「退きましょう」
「……ほむら!?」
驚きとともに、ブレードが振り返る。
そこには、杏子の手を引いたままこちらを見据える暁美ほむらがいた。
「これは……なんだ? 魔法か?」
「話は後よ。今は、撤退して態勢を立て直さなければならない」
「なっ……お前、さやかを見捨てて行く気かよ!?」
杏子の台詞に、ほむらがゆっくりと振り返った。
「この場に居残って、何か状況を覆す一手を、貴方は打つことができるの?
そんな無謀な賭のために、あなたとブレードを失うわけにはいかないわ」
「……くそっ」
ほむらの言葉を否定しきれずに、杏子は忌々しく地面を蹴る。
杏子がこれまでの戦いの経験から培ってきた勘は、確かに撤退することを彼女自身に訴えかけていた。
「……確かに、それしか方法はない、か」
「気をつけて。私の手を離してしまったら、あなたの時もまた止まってしまうわ」
苦々しくブレードはつぶやくと、ほむらと杏子を抱えて踵を返した。
だが、この場を去る直前に、杏子はブレードの肩越しに、時が止まったまま動かないさやかへと叫んだ。
「待ってろよ、さやか。――絶対に、絶対に戻ってくるからな!」
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「―――!?」
一瞬でブレードが目の前から消えたことに、オクタヴィアは制動をかけた。
罠の可能性を疑って周囲に気を飛ばすが、ブレードと杏子の気配は既にない。
「……逃げた、か」
「…………」
「フフフ、フハハハハ! 後は、このまま一気に紛い物共と裏切り者ブレードを始末するのみよ!」
勝ち誇って高笑いをあげるランスを尻目に、オクタヴィアはある一点を無言で見つめ続けていた。
さっきまで杏子がいたはずの、その位置を。
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