過去ログ - 10031号の、ささやかな望み
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4:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)[sage saga]
2011/04/16(土) 03:41:52.33 ID:QJzJFNXt0

「――――――、標的確認できず」


一言呟き即座にゴーグルをずらす少女は、標的が各種センサーの動作範囲にいないことを確認してからようやく大きく息をついた。

額に浮かぶ汗を拭う余裕も無さそうな様子で、息を整える為に目を閉じる横顔は幼さを残してはいても整っている。
目蓋に張り付いた前髪が鬱陶しかったらしく、片手で目を擦る仕草は彼女の姿と妙に合ってはいたが、状況とは全く持って合っていない。

今一度後ろを一瞥して、やはりそこに誰もいないことを確認して少女はほんの少しだけ張っていた気を緩めた。
しかし壁に寄りかかる体がズルズルと沈み込み、それを支えんとする脚が小刻みに震えているのを理解して、一目ではわからない程度に眉根を寄せる。


(何とか撒くことはできたのに。このままでは、彼を迎え撃てる最小限の身体能力(スペック)を発揮する所かただ移動を行う事も覚束ないかもしれない……、とミサカは内心で吐き捨てます)


それも已む無い事だった。背後に常に気を配った上での圧倒的格上への逃走戦を続けてきたのである。おまけに最後に標的を撒いた際の運動量は、人目を利用したものだとしても一般生活では到底経験するレベルのものではない。
予想を上回る疲労の蓄積は決して少女だけの落ち度では無かった。
だが少女が迎え撃つ、しかし今はまだ来てほしくない標的は疲労を理由に待ってはくれない。
体を沈めながらもう一度大きく息を吐いて、少女は再び走り出す。影がビルとビルの合間を縫って駆けた。




今回の実験にあたって支給された虎の子が待ち構えている目的地は、もう直ぐそこだ。
標的、彼ならばこれまでの傾向からも恐らく策を弄する事なく『全方位』正面から直撃を受ける事だろう。
それならば、或いは。そう考えながらも足は止まらない。



ビルの扉の内にゴーグルの光が消えるまで、そう長くはかからなかった。



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