過去ログ - 一方通行「いい子にしてたかァ?」3
↓ 1- 覧 板 20
54: ◆d85emWeMgI[saga]
2011/04/20(水) 23:17:45.71 ID:Mt9UmC0G0
「子供って……超同じ絵本をおねだりしてくるんですよね。他の本もあるのに超脇目も振らずに」
絹旗も保育園で園児達によく朗読を強請られる。
お昼寝の時間、寝物語のつもりで一冊くらいならという見積もりが甘かったせいで興奮して目が覚めてしまった園児達の相手をする羽目になった事も何度もある。
「忘れちゃうわけじゃないんですよね。私もおぼろげだけど、結末まで知ってて読んでもらってた気がするんですよ」
「そうね」
佐天が想の寝顔をそっと撫でる。
勿論、この賢い少女は絵本の内容などとうに把握している。
何度も何度も読んでもらう必要など何処にもない。
けれども、想に限らず、幼い子供は絵本を繰り返し繰り返し親に読んでもらう。
同じところでハラハラし、同じところで胸を撫で下ろし、同じ結末で大喜びするのだ。美琴も身に覚えがある。
お気に入りの絵本を何度もおねだりするたびに、美鈴は「美琴ちゃんってば、本当に好きね」と呆れていたものだ。
美琴も母親になって、同様に呆れることとなった。
けれども、この二人の姿を少し離れて見ているウチに、何となく理由がわかった気がする。
「多分……実感が欲しいんじゃないかしら」
美琴の手が想の柔らかな髪を撫でる。
そして、一方通行の白い、ベランダから照り付けてくる西日に染まった髪も同じように撫でてやる。
一瞬、一方通行が身動ぎした。
起きるかと、三人の女は僅かに焦るが、一方通行はすぐに寝息を立てる。
美琴の手が心地良いのか、時折猫がするように小さく頭を摺り寄せる。
「実感…ですか?」
「うん、多分ね。っていうか私が勝手にそう思ってるだけだけど。何ていうんだろ、大切にされてるっていう実感。
大好きな人の時間を自分が独り占めにしてるっていう実感って言えばいいのかな」
967Res/570.08 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。