過去ログ - まどか「黄金の……狼……」 牙狼―GARO―魔法少女篇
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669: ◆ySV3bQLdI.[saga sage]
2011/10/26(水) 02:34:46.66 ID:1614KIITo

 その身体は背後へと倒れていく。瞳に空が映り、追い縋る零の右手が遠ざかる。
 カシンッと頭の上で響く金属音。鋭利に過ぎる槍の穂先は、タイルの床にさしたる抵抗もなく吸い込まれ、
半ばほど埋まったところで止まった。

 杏子は槍の安定を確認もせず全体重を預け、グッと身を折り畳む。
即興の割に槍が外れたり、バランスを崩して転倒しなかったのは奇跡に近い。
それは魔法少女の身体能力と天性の勘の賜物か、或いは執念が呼び寄せた必然だったのか。


 狙いを定める必要はない。両腕にあらんかぎりの力を込め、縮めた両足ごと溜めた力を解放する。
 上下が逆なら、さぞ見事なカエル跳びになっただろう。踏み締める大地を両腕と全身のバネで補ったが故に、
不安定な体勢からでも、その蹴りは凄まじい爆発力を持って放たれた。

 驚愕したのは零だ。顔面目がけて、さながらロケット砲の如きキックが発射されたのだから。
 逃げ場はない。おそらく当たれば骨をも砕く威力がある。
まず後退は不可能、左右どちらに首を振ろうと、頬が削ぎ落されるのは覚悟しなければならない。


 ただでさえ杏子を追って右腕を伸ばしている状態。身体に回避が伝達されるまで、数瞬のラグが生じる。
 杏子がそうだったように、零もまた刹那の取捨選択を突きつけられた。

 左右と背後が塞がれた危機に、零を救ったもの。
 それは彼女と同じ、たった一人で誰に頼ることもなく戦い抜いた経験と、培った戦士の勘。
 死中の活は探すまでもなく、目の前にあった。 

「――――っ!!」

 大きく息を吸い、一歩を踏み込む。
 唯一の活路は杏子の左足と右足の間、数センチ程度の幅。零はそこへ滑り込んだ。 



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