過去ログ - 律「終末の過ごし方」
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31:にゃんこ
2011/05/13(金) 22:48:35.82 ID:O4OQsKgL0
放課後、と言うべきなのかどうなのか、とにかく普通だったら全ての授業が終わっている放課後の時間。
私は一人、部室で軽くドラムを叩いていた。
『終末宣言』から約一ヵ月半、多くの同級生が学校に来なくなる中、私はといえばほとんど毎日学校に足を向けている。
勿論、勉強が好きなわけじゃないし、高校生なら学校に登校しなきゃって使命感に燃えてるわけでもない。
人類の終末が近付いているらしいけど、焦って何かをする気にはなれなかったし、この状況で何処かに旅行するのも危険だった。
以下略



32:にゃんこ[saga]
2011/05/13(金) 22:49:05.42 ID:O4OQsKgL0
だからというわけじゃないけど、私は平日休日を問わず登校している。
飽きっぽい私にしては、これは快挙なのかもしれない。
でも……、


33:にゃんこ[saga]
2011/05/13(金) 22:49:33.42 ID:O4OQsKgL0
「日常に逃げ込んでんのかなあ、私……」

ドラムを叩く手を止め、自分に言い聞かせるように呟いてみる。
世界の終わりが一週間後に迫ったらしい今になっても、私は未だにその実感が湧いて来てなかった。


34:にゃんこ[saga]
2011/05/13(金) 22:50:02.17 ID:O4OQsKgL0
そりゃあそうだ。
もうすぐ死ぬと言われても、私の身体に異変が起こっているわけでもなし、私自身は健康体そのものだし。
病気にかかっているわけでもないし、大怪我を負っているわけでもない。
これで死の実感を持てと言われても、誰にとっても無理な話だろう。


35:にゃんこ[saga]
2011/05/13(金) 22:51:07.58 ID:O4OQsKgL0
だけど、思う。
それを実感しないように、私は『終末宣言』前の生活を繰り返してるんじゃないんだろうか。
いつも通りに過ごしていたら、一週間後の世界の終わりなんて夢みたいに消えて無くなって、何事もなくいつも通りの生活に戻れる。
澪をからかって、唯とふざけて、ムギとお茶をして、梓をいじってやる。
そんな変わらない日常が戻って来る。戻れる。


36:にゃんこ[saga]
2011/05/13(金) 22:51:41.27 ID:O4OQsKgL0
心の何処かでそれを期待してるんじゃないか。
だから、こんな時期になってもしつこく登校し続けてるんじゃないかって、そう思えてしまう。
けれど、そう思えたところで、今更私には他にどうする事も出来ないんだけど。
少しだけ溜息を吐いて、ドラムの練習に戻ろうかと思った瞬間、部室の扉がゆっくりと開いた。


37:にゃんこ[saga]
2011/05/13(金) 22:53:15.05 ID:O4OQsKgL0
「りっちゃん、おいっす」

扉を開いたのは唯だった。
『終末宣言』以来、私に次いで登校数の多い唯は、やっぱりいつも通りの唯に見えた。
こいつも私と同じように、一週間後に世界が終わるなんて、そんな実感は無いんだろうか。
以下略



38:にゃんこ[saga]
2011/05/13(金) 22:53:41.06 ID:O4OQsKgL0
「相変わらず早いね、りっちゃん」
「まあなー。家に居てもやる事無いしなー」
「駄目だよ、りっちゃん。時間はちゃんと使わないと青春の無駄遣いだよ」
「家に居ても大体ゴロゴロ転がってるだけのお前が言うな」
「甘いね、りっちゃん。それが私の充実した青春なのです!」
以下略



39:にゃんこ[saga]
2011/05/13(金) 22:54:07.84 ID:O4OQsKgL0
苦い顔で私が言ってやると、唯はいつもの、してやったり、といった感じの表情を浮かべる。
ホント、こいつはいつでも何処でも変わらんなー。
それが唯の持ち味であり、唯の強さでもあるんだろうな。
『終末宣言』直後、私は軽音部の活動は以降自由参加という形式に変更する事を提案した。
そもそもが自由参加に近い軽音部だけど、あえて言葉にする事で皆の自由意思を尊重する事を伝えたかった。
以下略



40:にゃんこ[saga]
2011/05/13(金) 22:54:35.77 ID:O4OQsKgL0
それでも、こんな状況だし、家庭や色んな事情で仕方なく欠席する事も多くなるだろうと思ったからだ。
幸いなのか我が田井中家は放任主義で、
数日家族で過ごすだけで家族の時間は終わって、後は家族各々が自由に過ごすという形になっていた。
少しクール過ぎやしないかと思わなくもないけど、それがうちの家族だし、聡もそれで不満はないみたいだった。
とにかくそれ以来、軽音部の活動に参加する頻度は多い順に私、唯、梓、澪、ムギという順番になっている。


41:にゃんこ[saga]
2011/05/13(金) 22:55:02.81 ID:O4OQsKgL0
「それより、りっちゃん」

急に真剣な顔になって、唯が言った。
何を言い出すのかと思って身構えたが、次の唯の言葉は本当にいつもと何も変わらない普段通りの唯の言葉だった。

以下略



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