24:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2011/05/23(月) 00:52:52.62 ID:u+2f/p+qo
フレンダは扉の裏にあるラックからミネラルウォーターのボトルを一本取り出し、
扉を閉める事なく手にボトルを提げたまま視線を庫内に向け続ける。
「結局、エンバーミングっていうんだっけ?
本来の用途とは違うらしいけど。ほとんど加工もせずにこの状態だっていうから凄いわよね。
これで常温でも数週間、冷蔵庫に入れとけば数年はもつってさ。他は損壊が激しくて無理だったらしいけど」
御坂の側には背を向けたまま、フレンダの表情は見えない。
「さすがに一人分丸ごとは駄目だったけどこれだけはね。後で何されるか分かったもんじゃないし」
まともな思考ができていれば明らかに異常だと分かるであろう言葉。
まるで決められた台本を朗読するかのような抑揚のない声でフレンダは語る。
彼女がどんな感情を抱いているのかも分からない。
序列第五位、『心理掌握』であるならなおさらの事。どんな状況だろうと彼女は自分の精神状態を好きに改竄する事ができる。
だが御坂にはそんな事はどうでもよかった。
「………………」
無言のまま、不安定なベッドの上を這うようにゆっくりと進み、真っ直ぐにフレンダの――いや、冷蔵庫の、その中身へと向かう。
一度ベッドの脇に降りきちんと歩いた方が早いだろうに、それすらも考える事ができていない。
ふらふらと夢遊病者のような態で御坂はゆっくりとそれに近付き――。
「ああ――」
どこか安心したような声を漏らした。
フレンダには一切目もくれず、御坂は彼の腕だけを見ていた。
「よかったぁ――」
開け放たれた冷蔵庫の前で、膝を突き、腰を下ろす。
そしてゆっくりと両手を伸ばし、冷たくなった彼の腕に触れ、硝子細工を扱うかのように優しく持ち上げると。
「私もまだ、壊れてないとこがあったみたい」
まるで神聖な物を捧げるように恭しく引き寄せ。
「当麻――」
愛しいその名を呼び。
柔らかく微笑み。
目を瞑り、彼の手に優しく口付けた。
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