555:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2011/09/11(日) 22:42:19.11 ID:UxqLXSBzo
「先生」
ようやく放課後となった教室を出ようとしたところで月詠小萌は呼び止められた。
「なんですか?」
月詠は努めて笑顔で振り返る。
視線の先には長い黒髪の少女が、どこか鬱々とした表情で立っていた。
必然的に見上げる形になる。身長差があるから仕方がないのだが。
姫神秋沙。
自分が担任を務めるクラスの生徒だ。
諸事情あって二学期からの転入生だが、クラスに馴染めるだろうかと不安になっていた事もある。
一時期は自分の住むアパートで共に暮らしていた。
そんな事もあって、他の生徒よりも多少――目を掛けている、かもしれない。
姫神は見上げる月詠の表情にほんの少しだけ眉を顰め視線を逸らす。
が、一呼吸を置いて再び月詠を見た。
「あの。……」
言いよどむ。
躊躇うような仕草だ。もしくは怯えだろうか。
月詠を見る姫神の瞳は揺れている。
口を開いてしまう事で何かよくない事が起こってしまうのを恐れているかのよう。
言葉にしてしまえばそれが現実となる。そう分かってはいるのだけれど、言葉にせずにはいられないような。
――予感はあった。
月詠も気付かない訳ではない。彼女はこのクラスの担任で、それも人一倍職務に忠実だった。
教師という職。子供に物を教える大人。彼女は教師であったし、そうであろうと努力している。
だからこそ月詠は優しげな笑顔を変えぬまま続く言葉を待った。
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