586:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2011/10/08(土) 22:01:29.95 ID:0NNV7K9wo
御坂はただ前方を向いたまま、引き摺られる少女には目もくれず、誰か――友人にでも語り掛けるような親しげで朗らかな声で問う。
「ねえ、歌は好き?」
ごり、と嫌な音が響く。
本来屋内と屋上とを繋ぐ扉があった場所、崩落した瓦礫の一つに引っかかった少女の体が大きなコンクリートの塊を押し、
同時に彼女の露出した白い腕、肩から少し先の場所に傷が生まれる。
石塊からほんの少し突き出した鋭利な角状の部分が彼女の肌に突き刺さり肉を抉り赤い傷を刻み付ける。
引き裂かれた肉の間からどろりと赤黒い血が溢れ滴る。
粘液質の光沢を帯びた赤い血は白い肌を流れ、腕と床との接触面へと落ちる。
そして引き摺られるたびに画布を絵筆が撫でるように床にその赤い顔料を擦り付け掠れた一本の線を引いてゆく。
「マザーグースって知ってるかな」
繋いだ御坂の右手。
一瞬、その周囲を光の蛇が絡み付くように踊り――同時に手を繋いでいたドレスの少女の体がびくりと痙攣する。
「有名どころだとやっぱりあれよね」
ぎしぎしと少女の体が捩れてゆく。
まるで何かに引っ掛かってしまっているのに無理に機械を動かすように。
ごりごりと『引っ掛かり』を削りながら本来の手順を全く無視して意思の無い機構は命令通りを施行する。
「あ――ア――――」
口の空隙から漏れる音は歯車の軋む音でしかない。
本来想定されていない動きを強要されたために起きる磨耗の響き。
しかし現在彼女を指揮するのは彼女で、この機構にどれだけ歪みが生じようとも痛くも痒くもない。
だから一片の容赦も慈悲も無く、もしかすると目的すらも無く命令のみを下知する。
606Res/449.61 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。