587:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2011/10/08(土) 22:06:32.80 ID:0NNV7K9wo
「Ah――h――」
ドレスの少女はただの無感情に喉を震わせる。
泣くように。笑うように。――歌うように。
「h――a――――ha」
強引に身体を捻り起こし案山子のような態で御坂の隣に立ち上がった彼女は虚ろな双眸から透明な液体を滂沱と流しながらどこか祈りにも似た音色を奏でる。
壊れたスピーカーの吐き出すような声。
ノイズ混じりのそれは音を確かめるように緩やかに揺れた後、一つの高さで安定する。
「Ha――h――hum――」
繋いだ手が離れる。
立ち止まった御坂を背後に少女はドレスの裾を強い夜風に翻し緩慢な動きで平坦な屋上の舞台へと歩みを進め。
「わん、つー、すりー、ふぉー♪」
夜闇に紫電が幽かに閃き、軽快な手拍子は空気の爆ぜる音を伴って打ち鳴らされる。
そして――。
「――はンぷーてィだンぷーてィさっとンなーうォーる♪」
少女の口から歌が流れ出る。
ぎくしゃくとしたその動きとは裏腹に滑らかに紡がれるそれは、けれど韻を無視した妙なアクセントで。
そしてどこか子供じみた音色をしていた。
異国の童歌の調べを口ずさみながら彼女は仕掛け時計の人形のように直線的な動きで歩みを進める。
真っ直ぐに――屋上の端に向かって。
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