827: ◆DAbxBtgEsc[saga]
2011/07/23(土) 21:29:55.94 ID:8F0fn2D4o
「『真実』を得る事など不可能だ……『真実』はいつも霧の中に隠されている……
手を伸ばし、何かをつかんだとしても、それが『真実』であるかどうか確かめる術などない……
なら、真実を求める事に何の意味がある?目を閉じ、己をだまし、楽に生きて行く……その方がずっと賢いじゃないか……」
真実など誰にも分からないし、確かめる術などない。
ならば何かを考えるよりも、刹那的に生きた方が、楽だし楽しい。
先の天井の影の様な事を、クマの影は重苦しい口調で語るが。
「お前何言ってるクマ!?全然分からんクマよ!?
クマがあんまり賢くない事を知ってて、そんな難しい事を言って馬鹿にしてるクマ!?
失礼しちゃうクマ!クマはこれでも精一杯考えてるの!!」
「……それが、無駄だと言っているのさ……君は、初めから『からっぽ』なんだからね……」
その言葉で、クマは更に動揺した。
自分など存在しない。なぜなら、初めからからっぽなのだから。
クマの影の言葉を反芻させる一同をよそに、クマの影は語り続ける。
「君は心の底で気付いているはず……でも認められず、別の自分を作ろうとしているだけさ……
そして、その事実を、今の今まで隠し続けて、気付かないふりをし続けていた……」
「そ、そんなの……嘘クマ……」
「クク……さっきも言われただろうが……もう一度言ってやろうか……?
君は、私なのだからな……その方が信じられるだろう?
……君はただの……」
「〜〜ッ!!やめろって言ってるクマー!!」
クマは今まで聞いた中でも一番大きな声で、悲鳴のような叫び声を上げ、クマの影の発言を止めにかかる。
「「クマ!!」」
しかしそれは叶わずクマの影が発する何かによって、弾き飛ばされてしまった。
「君達も、同じ事さ。真実など探すから、辛い目に遭う……
そもそも、この深い霧に包まれた世界……正体すら分からないものを、この中からどうやって見つけるつもりだ?」
「あァ?真実はいつも一つって言うだろォ?どっかにあるンじゃねェ?」
と、投げやりに回答する一方通行。クマの影に対する敵愾心に満ち満ちていた。
「……真実が欲しいなら、簡単な事さ……君達が、何かを見つけた時、それを『真実』だと思いこめば良いのだからな」
クマの影の言葉に、全員が何も言い返さず、ただ考え込む。
「では、一つ真実を教えてあげよう」
「……君達は、ここで死ぬ。知ろうとしたが故に、何も知り得ぬまま……」
クマの影は、もう言う事は無いと言わんばかりに、体にまとったどす黒い気配を、更に黒に染め上げる。
バキゴキ、と鈍い音を立てつつ、クマの影が異形へと変貌を遂げて行く。
顔は崩れ落ち、崩れた顔から、闇と、光を見据える目が覗きこみ、巨大な体を這わせて、にじり寄ってくる。
「……お前ら、こいつをさっさとかたずけて、帰るぞォ……」
結局ろくな情報も得られず、新たに得た物は単語二つとクマの影。
一方通行は怒りながらも、もうやってらンねェ。と言った疲れた雰囲気を出すと言う器用な事をしつつ、言葉を発した。
3人は、ただ首を縦に振る事だけで、了承の意をしめした。
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