944: ◆DAbxBtgEsc[saga]
2011/07/27(水) 17:37:29.59 ID:ZsHX3CDOo
そして、時は現在。
一方通行は、『フェロモン珈琲』を前に、息を呑んだ。
店の中に入った時点で分かったが、既にコーヒー豆の匂いで埋め尽くされたそこは、一方通行にとってまさに楽園だった。
しかし、そこに『異物の匂い』を感じ取った。
一方通行は思わずあたりを見回す。
「この甘ったるい匂いは……sugar(砂糖)……だと……?
誰だそンなもンでこの神聖な空気を汚す輩は」
コーヒーの良い匂いによって良い気分だったのに、一気に不機嫌になる。
お前は犬かと突っ込みを入れたくなるが、ことコーヒーに関しては一方通行はうるさいのだ。
一方通行の意外な一面を見たオルソラは、
クスリと笑いながら何も言わず一方通行の様子を眺める事にした。
砂糖は、邪道。
苦いのが嫌なら、コーヒーなど飲むなと針の筵の上に正座させて言ってやりたいところだが、
聖なる地にて暴力沙汰は許されないだろう。何より、そんな事をして出禁になりたくない。
そういう問題でも無いのだが、一方通行はせめて匂いが届かないように、
客の少ない窓際の席にまで移動するのだった。
そしてようやく、一方通行の元に辿り着いた珈琲。
それは神々しいまでの輝きを放ち、2人を圧倒した。
砂糖によって一気に不機嫌になった一方通行の顔も、少しばかりゆるんだ。
まだだ、まだ笑ってはいけない。まだこの味を味わっていないのだから。
フルフルと手を震わせながら、一方通行はカップを手に取り、口をつける。
「う、うめェ……」
感極まった様子で、もう一口。
「うめェよ……」
その日、世界が変わった。
何か熱いものが込み上げて来て、頬から一筋水滴が流れ落ちた。
ちなみに、オルソラは紅茶を頼んでいた。砂糖付きで。
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