過去ログ - 一方通行「なァ木原くン。その楽園ではずっと一緒にいられるのか?」
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6:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]
2011/05/29(日) 22:09:23.80 ID:ZZs8tIq1o


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――ここは、ひどく寒い。


底冷えするような寒さの中、少年はまるで愛しいものを抱くかのように己の膝を抱えていた。
白い検診衣の裾から覗くその膝は痩せこけて哀れで、そしてそれを抱く腕もまた朽木のように細い。

少年の周りを取り囲むのはまるで底なし沼のように果てのない闇だった。

どろりと絡みつくように渦巻く黒。
時折思い出したように光るのは彼の体を弄ぶ機械の残滓だろうか。
実験が終わり照明の落ちたこの部屋は実に暗かった。
煌々と灯りが灯されている時に感じる無機質な白はその存在すら感じさせない。

いつもならばこんな嫌な思い出ばかりが残る部屋はさっさと立ち去っているはずなのに。
唇を噛み締めて、だがじっと耐え忍ぶ。

少年は男を待っていた。

この奈落のような残酷な世界で、ただ一人彼の標となる男。
いつだって実験が終わった少年を笑って出迎えてくれる男。
いくら悪態をついても、顔を背けても最後には笑ってくれる男。

今日は未だ、姿を表さない軽薄な男。

身震いをしてよりいっそう強く膝を――折れてしまいそうな心を抱く。
誰かが置いていったのかそっとその小さな双肩にかけられた襤褸い毛布の存在が、今はただただ有り難かった。
            ・ ・
もしかしたら自分はまた捨てられたのだろうか。
ふと思い浮かんだ妄想に幾度となく首を振って。

そうしてどれくらいの時が過ぎ去ったのか。



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