224: ◆BcaCp9aHJ6[sage saga]
2011/06/19(日) 17:43:31.12 ID:hAzv6ppPo
「あれから、何度か折を見て上条さんのお見舞いに参りました」
「バイオリンが弾けない事を何度か口にされて、その度辛そうにしていらしたのですが」
「ある日、突然口にされたんです」
「死にたい、と」
「すぐに止め、その時は納得されたのですが」
「その日以来、その言葉を口にされることが多くなっていきました」
「そしてある日、頼まれたんです」
「一緒に死んで欲しいと」
「当然、止めましたが、決意は固く」
「一人でも死ぬと、もう耐えられないと仰って」
「このまま一人にしてしまえば、きっとそのまま死んでしまうと思って」
「お供をして、その上で私が彼を庇えば、きっと少しは思い直してくれるだろうと思いました」
「でも、結局はこういう事態を招いてしまいました」
「本当に、申し訳ありませんでした」
仁美の語りは、ようやく終わった。
頭がノイズで満たされていく。
あたしは自分の事に必死で、何も気付いていなかった。
心が自己嫌悪と怒りで満たされていく。
ただ、必死に、言葉を繕う。
「仁美、ありがとう。 恭介を守ってくれて」
その一言を必死に言い終えると、病室から駆け出る。
もうこれ以上正気を保てる気はしなかった。
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