35:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)[sage saga]
2011/06/07(火) 23:57:52.28 ID:0lrJo1gHo
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倒しても倒しても、魔獣が減らない。
それどころか無限に沸くのではないかと思うくらい、後から後から現れる。
『これはまた、大勢でお出ましね』
『何だこの量、いくらなんでも捌ききれねーぞ!?』
目の前に広がるのは、さらなる魔獣の大群。
私は佐倉杏子と巴マミと、この絶望的な風景をぼんやりと眺めていた。
この開けた土地において、疲弊した力を以って、もはや抗える規模ではない。
逃げるしかなかった。
光線が飛来する。
直線的なその攻撃は、しかして無数の方角から発射された時、面を制圧する攻撃の波と化す。
凄まじい密度だったけれども、巴マミのリボンと、佐倉杏子の槍が作り出す足場のおかげで、ギリギリの回避に成功した。
しかし、こうして回避を続けても、根本的な解決にはならない。
時を止めて少しでも距離を取ろう。
一度身を隠してから、各個撃破して少しでも数を減らし、対処できる数まで落とし込むしかない。
あまりに厳しい状況だが、やるしかない。
だが。
時を止めることができない。
それどころか、私の口が動くことすら、ない。
ただ硬直する私に向かって、声が飛ばされる。
『暁美さん、佐倉さん、早く逃げなさい。 こいつらは私が引き受けるわ』
『ふざけんじゃねえ! てめえだけ置いて逃げられるか!』
『あなたが残った所で、私と一緒に死ぬだけよ』
『…………てめえ、囮になる気すらねえじゃねえか……!』
『そうね。 でも、全員共倒れよりまし』
やめて。
みんな一緒に死んだほうが、まだいい。
そう叫ぼうとするのに、私の口は動かない。
それどころか、未だ抗弁する佐倉杏子を抱え、走り出した。
そして理解する。
これは夢だと。
二人に会い、ぬるい幸せ気分に浸っていた自分を、現実に引き戻すための夢だと。
そうだ、私は。
『じゃあね、二人とも。 あなたたちを守れただけでも、私は満足よ』
『クソッ、離せ! 離せよ! あたしはこんなこと望んでねえぞ!』
巴マミがマスケット銃を無数に呼び出し、一斉に発射する。
私達と彼女の間の地面めがけて。
地割れが長く走り、土煙が立ち込め、完全にその空間は遮断された。
それから、長く長く銃撃音が響き続け、
やがて止んだ。
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