過去ログ - 梓「最後の花火に今年もなったなー」
↓ 1- 覧 板 20
31:名無しNIPPER[sage]
2011/06/12(日) 23:23:36.27 ID:kTga5cfAO
唯先輩はよく自分が行った場所の話をしてくれた。わたしがその話を聞くのは大抵、2人で星をみあげながらアイスを食べているときだった。
わたしたちは毎日のようにそうしたのだけれど、唯先輩の話は尽きることなく、それでいて面白かった。例えば、それは、海で演奏していたら蟹に足を挟まれた話だったり、雪が3メートルも積もった町の話だったりした。
32:名無しNIPPER[sage]
2011/06/12(日) 23:25:21.83 ID:kTga5cfAO
だから、あの日もわたしたちは唯先輩が最近行った町の話をしていた。
「それでね、その町で花火大会があったんだけど…」
「…花火って何ですか?」
33:名無しNIPPER[sage]
2011/06/12(日) 23:26:57.86 ID:kTga5cfAO
「だから、花火って何ですか」
「花火っていうのはねー」
唯先輩は花火を思い出しているのか、目をつぶり、少しして言った。
34:名無しNIPPER[sage]
2011/06/12(日) 23:29:40.91 ID:kTga5cfAO
「唯先輩はいつから、そうやっていろんなところを旅してるんですか?」
「うーん、よくおぼえてないけど15歳くらいじゃないかな」
「すごいですね」
「そんなことないよ。これがわたしには普通だったし」
35:名無しNIPPER[sage]
2011/06/12(日) 23:30:25.56 ID:kTga5cfAO
「唯先輩はいつから、そうやっていろんなところを旅してるんですか?」
「うーん、よくおぼえてないけど15歳くらいじゃないかな」
「すごいですね」
「そんなことないよ。これがわたしには普通だったし」
36:名無しNIPPER[sage]
2011/06/12(日) 23:31:40.35 ID:kTga5cfAO
「ときどき、ひどく寂しくなるんですよ」わたしはぽつりと話はじめる。
「誰もいなくて、それなのに誰かが消えてしまいそうで……唯先輩にはそういう時、ないですか?」
唯先輩はちょっと首をかしげて言う。
37:名無しNIPPER[sage]
2011/06/12(日) 23:33:07.28 ID:kTga5cfAO
「あずにゃん!寂しいならこの唯先輩に抱きついてもいいんだよ」
そう言って、唯先輩は両手を広げる。
「遠慮しときます」
38:名無しNIPPER[sage]
2011/06/12(日) 23:37:38.83 ID:kTga5cfAO
唯先輩といられる最後の日、朝から唯先輩はどこかに出掛けにいっていた。最後の日くらい一緒にいたかったが、これはこれで自由な唯先輩らしいなとも思った。
唯先輩が帰ってきたのは、結局、夕方になってからだった。
「まったく、どこ行ってたんですか」
39:名無しNIPPER[sage]
2011/06/12(日) 23:39:07.10 ID:kTga5cfAO
「それで、なんで出掛けてたんですか?」
「ああ、それはねー」
唯先輩はわたしの手を引っ張り、外に出た。空はもう暗くなりはじめていて、星もちらほら顔をみせている。
「これを探してたんだ」
40:名無しNIPPER[sage]
2011/06/12(日) 23:40:40.65 ID:kTga5cfAO
「ほら、開けてみてよ」と唯先輩が言うので、まさか爆発するわけでもないだろうが、わたしはおそるおそる袋を開いた。わたしは中から一本を取り出して言う。
「こんな細いのも花火なんですか」
「線香花火だね!それは最後のお楽しみだよー」
41:名無しNIPPER[sage]
2011/06/12(日) 23:41:56.89 ID:kTga5cfAO
こんなひょろひょろしてるのが最後のお楽しみなんて花火も大したことないな、と思う。そして、その予想はすぐに外れた。
唯先輩が持っている花火の先端に火をつける。花火は赤っぽい光を発した。唯先輩が手をくるくると回すと、それにあわせて、光も円を描く。しばらく、わたしはそれに見惚れる。
70Res/29.82 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。