過去ログ - 梓「最後の花火に今年もなったなー」
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50:名無しNIPPER[sage]
2011/06/13(月) 00:06:37.65 ID:GRzMm0CAO

だから、わたしはあの町を引っ越してしまった。別に自分からそれを望んだわけじゃない。あの町ではどうしても就職先を見つけられなかったし、働かなくてはそのうち生きていけなくなっただろう。

でも、あれは唯先輩との約束だった。唯先輩はきっとあの町に来るはずだ。でも、わたしはいない。

以下略



51:名無しNIPPER[sage]
2011/06/13(月) 00:07:39.29 ID:GRzMm0CAO

わたしは気合いを入れるため大きく息を吸い込み、ゆっくりと玄関のドアを開ける。
そして、見た。

わたしは目の前で起きていることが信じられず、何度何度も目をしばたたかせる。だけど、目の前のそれは消えない。
以下略



52:名無しNIPPER[sage]
2011/06/13(月) 00:10:47.39 ID:GRzMm0CAO

「あずにゃーん。会いたかったよ」

唯先輩は言うなり、飛び付いてくる。唯先輩はあの時と同じで、暖かく、心地よく、そして懐かしい。

以下略



53:名無しNIPPER[sage]
2011/06/13(月) 00:13:00.81 ID:GRzMm0CAO

「あ、あのときした約束守れなくて……」唯先輩はしぃーというようにわたしの唇に人差し指をあて、代わりに言った。

「わたし、言ったよ。わたしはあずにゃんがどう逃げようと絶対抱きつくからって」
そして唯先輩は、笑って続ける。
以下略



54:名無しNIPPER[sage]
2011/06/13(月) 00:14:00.81 ID:GRzMm0CAO

「大きな花火だね〜」
今、わたしたちはわたしのアパートのベランダにいた。空に咲く花火を見上げている。

「唯先輩、どうしてここにわたしがいるってわかったんですか?」
以下略



55:名無しNIPPER[sage]
2011/06/13(月) 00:15:43.72 ID:GRzMm0CAO

「それで、この街で大きな花火大会があるのを聞いて、あずにゃんとした花火を思い出してここに寄ったんだ。それで昨日なんだけど、あのあたりでギターを弾いてたんだ」

唯先輩はその場所を教えようとするが、この街は広い、多分、わたしの行ったことない場所だろう。

以下略



56:名無しNIPPER[sage]
2011/06/13(月) 00:17:01.22 ID:GRzMm0CAO

「それは純じゃないですか」とわたしは言う。

「へぇー純ちゃんって言うんだ。その純ちゃんがね『梓に会ってください』って頭を下げるから、わたしもよくわかんないから、とりあえず『わかったよっ』って答えたんだ。あずにゃんを探してたわけだし」

以下略



57:名無しNIPPER[sage]
2011/06/13(月) 00:20:18.80 ID:GRzMm0CAO

「それと、純ちゃんからの伝言を頼まれたんだ。『これからもよろしく』だって」

わたしは純がわたしのことを迷惑に思ってるとばかり思っていた。けれど、違った。わたしはバカだ、と思う。

以下略



58:名無しNIPPER[sage]
2011/06/13(月) 00:21:35.66 ID:GRzMm0CAO

 わたしは部屋に行き、旅に出るための準備をととのえる。その間、唯先輩はギターを弾いて、新曲だという曲をいくつか歌ってくれた。わたしはそこで、あることに気づいた。
「あれっ、そういう曲も歌うことにしたんですか?」

「…わたし、あずにゃんに会えなくなってすごく、すごく寂しかった。寂しくなったのなんてはじめてで、どうしたらいいかわかんなかったよ」
以下略



59:名無しNIPPER[sage]
2011/06/13(月) 00:23:14.67 ID:GRzMm0CAO

「そしたら、どんな歌作っててもさあずにゃんの顔が浮かんでくるんだよ。だから、こんな曲になっちゃった」

わたしは顔まで真っ赤になって、照れくさいから、こう言った。

以下略



60:名無しNIPPER[sage]
2011/06/13(月) 00:25:00.57 ID:GRzMm0CAO

 わたしは準備を終え、荷物を持ち、ギターを背負って、部屋を出た。外だと花火の音がよりいっそう、大きく聞こえた。先に出ていた唯先輩がこちらに向かってくる。
「やり残したことはない?」
「はい、大丈夫です」
「そっかあー」
以下略



61:名無しNIPPER[sage]
2011/06/13(月) 00:26:44.79 ID:GRzMm0CAO

「あの、でも、またここに戻ってくることがあってもいいですか?」
「もっちろん!わたしも純ちゃんと友達になりたいな。あのもふもふはかわいい」
「そんなセンスしてるから、犬に、にゃん、とか平気でつけるんですよ」
「それは…あずにゃんはにゃんって鳴いたんだよ」
以下略



62:名無しNIPPER[sage]
2011/06/13(月) 00:28:00.42 ID:GRzMm0CAO

「じゃあ、そろそろ行こうか?」
「そうですね、行きましょう」

そう、行かなくちゃならないんだ。
以下略



63:名無しNIPPER[sage]
2011/06/13(月) 00:31:12.62 ID:GRzMm0CAO
【エピローグ】

わたしたちは、すでに街から出て、街から、ずいぶん離れたところまできていた。

花火大会はクライマックスをむかえていて、少し遠いがわたしたちにも、たくさんの花火が上がるのが見える。
以下略



64:名無しNIPPER[sage]
2011/06/13(月) 00:33:13.06 ID:GRzMm0CAO

「あれっ」
わたしはつい、声を出している。

「あー、消えちゃったねー」
以下略



65:名無しNIPPER[sage]
2011/06/13(月) 00:35:18.08 ID:GRzMm0CAO

わたしは一直線に宇宙の闇に向かっていく花火の姿を想像する。まるで今のわたしみたいだ。

すると、もう一人の自分が馬鹿じゃないの、と言ってくるのに気づく。
「だいたいさ、あんた、このままうまくいくと思うわけ?みんな花火みたいにすぐに消えちゃうよ」
以下略



66:名無しNIPPER[sage]
2011/06/13(月) 00:38:25.80 ID:GRzMm0CAO

わたしはもう一度、真っ暗な宇宙に向かって飛んでいく、打上げ花火について考える。きっと、それは楽なことじゃない。

けれど、わたしたちは二人だ。

以下略



67:名無しNIPPER
2011/06/13(月) 00:45:22.09 ID:GRzMm0CAO
これでおしまいです。
読んでくださった皆さんありがとうございます。


参考に
以下略



68:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸)[sage]
2011/06/13(月) 00:47:17.65 ID:stygS2kAO


良かったよ


69:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海)[sage]
2011/06/13(月) 21:44:44.63 ID:Z9p5++rAO
乙!

面白かった!


70:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2011/06/14(火) 16:47:26.29 ID:B/rX6YWE0
乙乙

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