過去ログ - 梓「最後の花火に今年もなったなー」
↓ 1- 覧 板 20
38:名無しNIPPER[sage]
2011/06/12(日) 23:37:38.83 ID:kTga5cfAO
唯先輩といられる最後の日、朝から唯先輩はどこかに出掛けにいっていた。最後の日くらい一緒にいたかったが、これはこれで自由な唯先輩らしいなとも思った。
唯先輩が帰ってきたのは、結局、夕方になってからだった。
「まったく、どこ行ってたんですか」
39:名無しNIPPER[sage]
2011/06/12(日) 23:39:07.10 ID:kTga5cfAO
「それで、なんで出掛けてたんですか?」
「ああ、それはねー」
唯先輩はわたしの手を引っ張り、外に出た。空はもう暗くなりはじめていて、星もちらほら顔をみせている。
「これを探してたんだ」
40:名無しNIPPER[sage]
2011/06/12(日) 23:40:40.65 ID:kTga5cfAO
「ほら、開けてみてよ」と唯先輩が言うので、まさか爆発するわけでもないだろうが、わたしはおそるおそる袋を開いた。わたしは中から一本を取り出して言う。
「こんな細いのも花火なんですか」
「線香花火だね!それは最後のお楽しみだよー」
41:名無しNIPPER[sage]
2011/06/12(日) 23:41:56.89 ID:kTga5cfAO
こんなひょろひょろしてるのが最後のお楽しみなんて花火も大したことないな、と思う。そして、その予想はすぐに外れた。
唯先輩が持っている花火の先端に火をつける。花火は赤っぽい光を発した。唯先輩が手をくるくると回すと、それにあわせて、光も円を描く。しばらく、わたしはそれに見惚れる。
42:名無しNIPPER[sage]
2011/06/12(日) 23:43:09.44 ID:kTga5cfAO
「ほらっ、あずにゃんもやりなよっ」
そう言って、唯先輩はわたしに花火を手渡し、火をつける。ゆっくりと紙が燃え、やがて黄色い光が飛び出した。少しして、光の色が緑にが変わり、わたしは驚く。
「…きれい」
43:名無しNIPPER[sage]
2011/06/12(日) 23:44:51.10 ID:kTga5cfAO
「でも、星という感じはしないですけど」「ああ、それは打上げ花火のこと。さすがに今日は持ってこれなかったけど」
「でも、この花火もすごくきれいですよ。それにしても花火にもいろんな種類があるんですね」
「そうだよー。じゃあ、これは知ってる?」
44:名無しNIPPER[sage]
2011/06/12(日) 23:46:12.98 ID:kTga5cfAO
「じゃあ、わたしが火をつけたら下に落としてね」
唯先輩が輪っかの先端に火をつける。わたしは言われたとおりに手を放すが、それは下に落ちてそのままだった。
「何もおきな…わあっ!!」
45:名無しNIPPER[sage]
2011/06/12(日) 23:48:02.69 ID:kTga5cfAO
わたしたちはすごい勢いで花火を消費していった。三本とか一斉に使うから当たり前だ。気づくと、唯先輩が持ってきた4つの袋はほとんど空になっていた。
「あとはお楽しみだけですね」
わたしは紐みたいなそいつをつまみ上げる。
46:名無しNIPPER[sage]
2011/06/12(日) 23:49:21.99 ID:kTga5cfAO
「やってみれば、わかるって」
線香花火に唯先輩が火をつける。パチパチという音とともに閃光がほとばしる。線香花火だけにだ。
わたしのほうはすぐに落ちてしまったが、唯先輩のは長い間光り続けている。線香花火の光はなんだか切なくてわたしの胸をきゅっと締め付ける。
47:名無しNIPPER[sage]
2011/06/12(日) 23:51:48.37 ID:kTga5cfAO
結果をいえば、一回しかわたしは唯先輩に勝てなかった。
気づくと、残りの花火は一本になっていた。最後の、一本だ。
「…これで最後ですね」
48:名無しNIPPER[sage]
2011/06/12(日) 23:55:41.36 ID:kTga5cfAO
わたしたちはほとんど無言で花火の片付けをした。唯先輩はあらかじめまとめてあった荷物を手にし、ギターケースを肩にかける。
「またいつかここに来るよ」
「ずっと、待ってますよ」
70Res/29.82 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。