過去ログ - 梓「最後の花火に今年もなったなー」
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41:名無しNIPPER[sage]
2011/06/12(日) 23:41:56.89 ID:kTga5cfAO

こんなひょろひょろしてるのが最後のお楽しみなんて花火も大したことないな、と思う。そして、その予想はすぐに外れた。

唯先輩が持っている花火の先端に火をつける。花火は赤っぽい光を発した。唯先輩が手をくるくると回すと、それにあわせて、光も円を描く。しばらく、わたしはそれに見惚れる。

以下略



42:名無しNIPPER[sage]
2011/06/12(日) 23:43:09.44 ID:kTga5cfAO

「ほらっ、あずにゃんもやりなよっ」
そう言って、唯先輩はわたしに花火を手渡し、火をつける。ゆっくりと紙が燃え、やがて黄色い光が飛び出した。少しして、光の色が緑にが変わり、わたしは驚く。

「…きれい」
以下略



43:名無しNIPPER[sage]
2011/06/12(日) 23:44:51.10 ID:kTga5cfAO

「でも、星という感じはしないですけど」「ああ、それは打上げ花火のこと。さすがに今日は持ってこれなかったけど」

「でも、この花火もすごくきれいですよ。それにしても花火にもいろんな種類があるんですね」
「そうだよー。じゃあ、これは知ってる?」
以下略



44:名無しNIPPER[sage]
2011/06/12(日) 23:46:12.98 ID:kTga5cfAO

「じゃあ、わたしが火をつけたら下に落としてね」
唯先輩が輪っかの先端に火をつける。わたしは言われたとおりに手を放すが、それは下に落ちてそのままだった。

「何もおきな…わあっ!!」
以下略



45:名無しNIPPER[sage]
2011/06/12(日) 23:48:02.69 ID:kTga5cfAO

わたしたちはすごい勢いで花火を消費していった。三本とか一斉に使うから当たり前だ。気づくと、唯先輩が持ってきた4つの袋はほとんど空になっていた。
「あとはお楽しみだけですね」
わたしは紐みたいなそいつをつまみ上げる。

以下略



46:名無しNIPPER[sage]
2011/06/12(日) 23:49:21.99 ID:kTga5cfAO

「やってみれば、わかるって」
線香花火に唯先輩が火をつける。パチパチという音とともに閃光がほとばしる。線香花火だけにだ。

わたしのほうはすぐに落ちてしまったが、唯先輩のは長い間光り続けている。線香花火の光はなんだか切なくてわたしの胸をきゅっと締め付ける。
以下略



47:名無しNIPPER[sage]
2011/06/12(日) 23:51:48.37 ID:kTga5cfAO

結果をいえば、一回しかわたしは唯先輩に勝てなかった。
気づくと、残りの花火は一本になっていた。最後の、一本だ。

「…これで最後ですね」
以下略



48:名無しNIPPER[sage]
2011/06/12(日) 23:55:41.36 ID:kTga5cfAO

わたしたちはほとんど無言で花火の片付けをした。唯先輩はあらかじめまとめてあった荷物を手にし、ギターケースを肩にかける。

「またいつかここに来るよ」
「ずっと、待ってますよ」
以下略



49:名無しNIPPER[sage]
2011/06/13(月) 00:05:03.31 ID:GRzMm0CAO
【第三部】

多分あのとき唯先輩は、一緒に来ない?と言おうとしたんじゃないかと、わたしは今では思っている。

いや、あの時だってわかっていた。じゃあなんでわたしは何も言わなかったのか。つまり、それがわたしの弱さだったんだ。人間、誰しも弱さを抱えている。オーケー、正直になろう。わたしは恐れてたんだ。
以下略



50:名無しNIPPER[sage]
2011/06/13(月) 00:06:37.65 ID:GRzMm0CAO

だから、わたしはあの町を引っ越してしまった。別に自分からそれを望んだわけじゃない。あの町ではどうしても就職先を見つけられなかったし、働かなくてはそのうち生きていけなくなっただろう。

でも、あれは唯先輩との約束だった。唯先輩はきっとあの町に来るはずだ。でも、わたしはいない。

以下略



51:名無しNIPPER[sage]
2011/06/13(月) 00:07:39.29 ID:GRzMm0CAO

わたしは気合いを入れるため大きく息を吸い込み、ゆっくりと玄関のドアを開ける。
そして、見た。

わたしは目の前で起きていることが信じられず、何度何度も目をしばたたかせる。だけど、目の前のそれは消えない。
以下略



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