過去ログ - 梓「最後の花火に今年もなったなー」
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47:名無しNIPPER[sage]
2011/06/12(日) 23:51:48.37 ID:kTga5cfAO
結果をいえば、一回しかわたしは唯先輩に勝てなかった。
気づくと、残りの花火は一本になっていた。最後の、一本だ。
「…これで最後ですね」
48:名無しNIPPER[sage]
2011/06/12(日) 23:55:41.36 ID:kTga5cfAO
わたしたちはほとんど無言で花火の片付けをした。唯先輩はあらかじめまとめてあった荷物を手にし、ギターケースを肩にかける。
「またいつかここに来るよ」
「ずっと、待ってますよ」
49:名無しNIPPER[sage]
2011/06/13(月) 00:05:03.31 ID:GRzMm0CAO
【第三部】
多分あのとき唯先輩は、一緒に来ない?と言おうとしたんじゃないかと、わたしは今では思っている。
いや、あの時だってわかっていた。じゃあなんでわたしは何も言わなかったのか。つまり、それがわたしの弱さだったんだ。人間、誰しも弱さを抱えている。オーケー、正直になろう。わたしは恐れてたんだ。
50:名無しNIPPER[sage]
2011/06/13(月) 00:06:37.65 ID:GRzMm0CAO
だから、わたしはあの町を引っ越してしまった。別に自分からそれを望んだわけじゃない。あの町ではどうしても就職先を見つけられなかったし、働かなくてはそのうち生きていけなくなっただろう。
でも、あれは唯先輩との約束だった。唯先輩はきっとあの町に来るはずだ。でも、わたしはいない。
51:名無しNIPPER[sage]
2011/06/13(月) 00:07:39.29 ID:GRzMm0CAO
わたしは気合いを入れるため大きく息を吸い込み、ゆっくりと玄関のドアを開ける。
そして、見た。
わたしは目の前で起きていることが信じられず、何度何度も目をしばたたかせる。だけど、目の前のそれは消えない。
52:名無しNIPPER[sage]
2011/06/13(月) 00:10:47.39 ID:GRzMm0CAO
「あずにゃーん。会いたかったよ」
唯先輩は言うなり、飛び付いてくる。唯先輩はあの時と同じで、暖かく、心地よく、そして懐かしい。
53:名無しNIPPER[sage]
2011/06/13(月) 00:13:00.81 ID:GRzMm0CAO
「あ、あのときした約束守れなくて……」唯先輩はしぃーというようにわたしの唇に人差し指をあて、代わりに言った。
「わたし、言ったよ。わたしはあずにゃんがどう逃げようと絶対抱きつくからって」
そして唯先輩は、笑って続ける。
54:名無しNIPPER[sage]
2011/06/13(月) 00:14:00.81 ID:GRzMm0CAO
「大きな花火だね〜」
今、わたしたちはわたしのアパートのベランダにいた。空に咲く花火を見上げている。
「唯先輩、どうしてここにわたしがいるってわかったんですか?」
55:名無しNIPPER[sage]
2011/06/13(月) 00:15:43.72 ID:GRzMm0CAO
「それで、この街で大きな花火大会があるのを聞いて、あずにゃんとした花火を思い出してここに寄ったんだ。それで昨日なんだけど、あのあたりでギターを弾いてたんだ」
唯先輩はその場所を教えようとするが、この街は広い、多分、わたしの行ったことない場所だろう。
56:名無しNIPPER[sage]
2011/06/13(月) 00:17:01.22 ID:GRzMm0CAO
「それは純じゃないですか」とわたしは言う。
「へぇー純ちゃんって言うんだ。その純ちゃんがね『梓に会ってください』って頭を下げるから、わたしもよくわかんないから、とりあえず『わかったよっ』って答えたんだ。あずにゃんを探してたわけだし」
57:名無しNIPPER[sage]
2011/06/13(月) 00:20:18.80 ID:GRzMm0CAO
「それと、純ちゃんからの伝言を頼まれたんだ。『これからもよろしく』だって」
わたしは純がわたしのことを迷惑に思ってるとばかり思っていた。けれど、違った。わたしはバカだ、と思う。
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