過去ログ - 梓「最後の花火に今年もなったなー」
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6:名無しNIPPER[sage]
2011/06/12(日) 21:12:53.81 ID:kTga5cfAO
ふと、部屋の片隅に置いてある電話機が目に入り、それと同時に、昨日純から電話がかかってきたことを思い出す。普段電話なんてこないから、よく覚えていた。
『梓!元気にしてる?』その時の純の声はなぜか嬉しそうだった。
7:名無しNIPPER[sage]
2011/06/12(日) 21:15:22.24 ID:kTga5cfAO
『そんなことよりさあ、梓死なないでよ!』
「はっ?どういう……」
『だって、梓さーなんか仕事も辞めてもううつ病患者みたいになってるじゃん』
「…なってない」
8:名無しNIPPER[sage]
2011/06/12(日) 21:20:25.67 ID:kTga5cfAO
「まあいいや、バイバイ。はじめてセールス以外の人からかかってきて、電話も喜んでると思う」
『……また会えるよね』
「ぷっ、何それ」わたしはつい吹き出してしまう。
「まるでわたしが引っ越すみたいじゃん」『……うん』
9:名無しNIPPER[sage]
2011/06/12(日) 21:26:18.93 ID:kTga5cfAO
わたしは立ち上がって、外へ出る準備をする。聞こえてくる音だけで、色とりどりの花火が上がるさまを想像できた。
人混みは好きじゃない。だけど、あの人がいるかもしれないという予感がしていた。ただ、その予感はいつもこの時期になると感じるものでもあった。つまり、わたしはあの日からずっと、あの人に会いたいと強く願っていたんだ。
10:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/06/12(日) 21:27:24.66 ID:/BbihJpIO
まなつのーピークがーさったぁー
11:名無しNIPPER[sage]
2011/06/12(日) 21:46:31.63 ID:kTga5cfAO
【第二部】
あの人にわたしが会ったのは、四年前、蒸し暑い夏の終わりだった。わたしはその頃は別の町に住んでいて、なんとなく行った散歩帰りにいつもの道をいつものように1人で帰っていた。すると道端でギターを弾いている女の人がいた。それがあの人だったのだ。
わたしはなんとなく興味がわいて、そこへ寄ってみた。そして、見惚れた。ギターを弾く姿やその音色、歌声、表情、どれをとっても美しくて、気づくとわたしは三時間もそこに座って歌を聞いていた。
12:名無しNIPPER[sage]
2011/06/12(日) 21:47:47.08 ID:kTga5cfAO
「お客さん、今日はもうおわりだよ〜」
お客さん?そこでわたしは気づく、これは商売だったのだ。ちゃんとお金を入れる箱も置いてある。わたしは気が動転していて、こんなまぬけなことを言った。
13:名無しNIPPER[sage]
2011/06/12(日) 21:49:28.68 ID:kTga5cfAO
あの人はわたしがお金をほとんど持ってないことを聞いても、怒ったり、つかみかかったりはしてこなかった。
「そっか、こんなかわいい子なのに、なかなかやるねぇ」
「えっ、いや、ホントにすいません」
「えへへ〜冗談だってー」
14:名無しNIPPER[sage]
2011/06/12(日) 21:55:44.31 ID:kTga5cfAO
「ちょっと待ってください」気づくとわたしはその人を追いかけて、肩に手をかけていた。
「どーしたの?」
「まさか、その公園で寝るんですか?」
「そーだよ」あの人は何か問題があるの、という顔をしている。
15:名無しNIPPER[sage]
2011/06/12(日) 21:59:39.73 ID:kTga5cfAO
家についた頃には、もうかなり遅い時刻なっていた。というのも、あの人がアイスを食べたいと言い出したからだ。
汚くて恐縮ですが、とわたしはあの人を家に上げる。
「今思ったんだけど、親に怒られない?」「親はいないです。事故で…」
16:名無しNIPPER[sage]
2011/06/12(日) 22:14:55.00 ID:kTga5cfAO
「そうだっ!わたしたちまだお互いの名前も知らなかったね」
そして、指先を自分のほうに向けた。
「わたしは唯っていうんだ」
「唯ですか…いい名前ですね」
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