過去ログ - もしも「まどか☆マギカ」が2クールだったら
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108: ◆NqJArk5IVdBU[saga]
2011/07/17(日) 18:31:35.83 ID:3RNaMLYEo
 あれから数日。
 人知れず街の危機を救った魔法少女達は、取り戻した日常を噛み締めるように、
それぞれの生活に帰っていた。

 ショッピングモール。
 至って平和な午後のひとときを、佐倉杏子が闊歩する。歩きながら口に食べ物を運ぶ姿も
相変わらずである。
 普通、魔女の動きが活発になるのは夕刻以降であるので、それまで如何に退屈しのぎをするか
という問題が、これまた相も変わらず、彼女を悩ませる。
 友人達が学校に行っているこの時間を、彼女は以前にも増して退屈に感じるようになっていた。
 それで彼女は新作映画の看板にあっさり釣られて、まだ人も疎らな映画館に立ち寄るのだった。
 そこに魔女が居たのは、純然たる偶然だった。

 暗闇の魔女、ズライカ。
 暗所に潜むこの魔女は、魔法少女の用いる魔力探知からも、かなりの程度まで隠れる性質を持つ。
 杏子は映画館に入るや否や微弱な魔力を感じ取り、目当てだった流行りの映画とは別の、いかにも
客足の遠いホールに足を踏み入れた。
 杏子はその弱い気配の主が使い魔だとばかり思っていたのだが、それを放置しようとはしなかった。
 重いドアを開けた途端、その気配が魔女に相応しいものになる。
 杏子は少し驚いて、唇を固く結ぶ。

杏子「こいつは……」

 強い眼差しの先にソウルジェムを掲げ、変身する。そして即座に結界に侵入した。
 以前の彼女なら、思いがけぬ魔女の気配に舌舐めずりの一つでもしていただろうが、
本人も知らず知らずの内に、そんなヒールの所作を過去の物にしていた。

 ズライカの結界は、ホールの形はそのままに、物質の表面を独特の幾何学模様で覆い尽くす。
 その闇が深ければ深いほどズライカは力を増すのだが、灯りの多い現代において、彼女が真価を
発揮する機会はまず無いと言って良い。

 戦いは一方的だった。
 スクリーンの消えた場内は薄暗かったが、杏子が暴れまわるには十分な視界が確保されている。
 暗がりから暗がりへ逃げ回るズライカを、杏子は的確に追い詰め、ダメージを与える。
 結局の所、光源を妨げる手段を持たない事が、この魔女の最大の欠陥だと言える。
 ついにズライカは逃げ道を失って、動きを止めた。

杏子「もういい」

杏子「もう呪わなくていい。せめて楽に、終わらせてやるよ」

 魔女を真っ二つに裂いて、決着をつける。
 結界が解ける。
 杏子は足元のグリーフシードと、椅子に置いたポップコーンを拾って、少し考え込んだ。

QB「やれやれ、君達はつくづく理解しがたいね」

杏子「てめぇは……」

QB「同胞と知っても、手にかける。殺しながらも、慈悲の言葉をかける。
 しかも、矛盾しながらも、魔法少女としては益々強力になってきている」

 杏子は怒りの表情を引っ込めて、その場を去る事にした。
 朗読のような言葉が、背中に浴びせられる。

QB「感情というのは、論理的に説明できそうでいて、時々こんな矛盾を見せる。
 僕達が長年理解できずにいる人間のステロタイプを、今の君は一身に纏っているね。
 実に興味深い。今キミは、どんな気分なんだい?」

 結局、映画は見ないまま外に出る事にした。
 そう言えば、そろそろ学校が終わる時間なのだ。


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