過去ログ - もしも「まどか☆マギカ」が2クールだったら
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47: ◆NqJArk5IVdBU[saga]
2011/07/06(水) 20:52:02.24 ID:qhCRi9rlo
 胸の奥が泡立つような感覚が、ほむらを襲う。
 急激な熱気が、思考ごと麻痺させるような熱量でつま先から頭まで昇ると、まるで走馬灯のように、
スローモーションの進行で、今という瞬間が本当に取り返しの付かない終わりに向かっている事を、
ほむらに警告していた。

 コツン。
 ほむらは最後のグリーフシードを使った。
 彼女はこれまでの経験から、最後の最後という瞬間までは必ず、グリーフシードを一つ
残すようにしている。
 それを今、使い切った。そうして役目を終えたそれは無造作に投げ捨てられ、一度地面で
跳ねた後、そのまま空中で静止した。
 ほむらが時間を止めていた。

 ダメージを受けた足に魔力を注ぎ、歯を食いしばり、岩盤から脱け出す。
 涙の跡を拭い、覚悟を決めて、立ち上がる。
 歩を進め、背を向けたまどかの向こう、足場になりそうな鉄塔に飛び移り、そうして、
もう一度彼女を見据える。

 まどかは決意の表情のままに凍りついている。もはや彼女にはどんな言葉も届かないだろう。
彼女は彼女の自己犠牲が、ほむらをも救うと信じている。だが、仮にそうであったとしても、
それはほむらが望んだ形とは違うのだ。

 時間が動き出す。夕焼けは刻々とその色を変えている。
 まどかは立ち塞がるほむらの姿を認めたが、何も言わず、ただ強い眼差しを向けている。
 ほむらは呟くように、しかし鋭い語気を込めて、宣戦布告を始める。

ほむら「まどか、あなたがあくまで破滅に向かうなら、私は私の全てを賭けて止めてみせる。
   何を犠牲にしても、構わない。あなたを救うためなら、私は手段を選ばない!」

 再び、時間停止。
 凍りついた時の中を、一歩ずつ、確実に距離を詰めていく。

 ほむらの狙いは再び時間を巻き戻す事である。まどかの恐ろしい願いを無かった事にするには、
それしかない。
 ただしその前に、確実にまどかを封じなければならない。彼女を放っておけば、その願いは
巻き戻した世界にまで影響を及ぼすだろう。

 まどかの目の前で足を止め、ソウルジェムに触れる。
 まどかに対する実力行使。その、もしもの時の備えとして麻酔や睡眠剤の準備もしていたが
それが有効なのはあくまで人間のまどかに対して、である。
 魔法少女となったまどかを制するには、もはやソウルジェムを砕くしかない。
 巨大な魔力を秘めたそれは、今はコンパクトな形状で彼女の胸に収まっている。

 銃口を向け、引き金を絞る。

ほむら「また、あなたを殺すのね」

 罪悪感が、引き金を止めた。
 自分の手で殺すか、死より恐ろしい結末を見届けるか。これまでほむらが辿ってきた経緯を思えば、
迷う余地は無いはずだった。
 だが、引き金が動かない。

 逡巡。
 撃てば、『この』まどかを失うという事以上に、何か重大な欠落を生む。そんな予感がした。

ほむら「時間を戻したその先で、またあなたと出会ったとしても」

 一体、どんな顔をすれば良いのか。

 まどかを手にかけるのは一度目ではない。前回と違うのは、それがまどか自身の意志に
沿っているか、否か。
 今回ばかりは全くのエゴだった。まどかの決意も、まどか以外の全ての幸福もそっちのけにして、
ただまどか一人を、自分が望む結末に収めるためだけに、再び殺害しようとしている。
 そうして今ここでまどかの意志を否定してしまえば、その結果出会う『新しい』まどかには、
まどかの意志が紡がれないのではないか。
 それでは、ただまどかの姿をした人形に等しいのではないか。自分自身のエゴが作り出す
傀儡同然になってしまうのではないか。

 銃口が定まらない。力を込めて手の震えを抑え込もうとするが、仕舞いには肩まで震えだす。
目を瞑り、結局は銃を下ろした。

まどか「ありがとう、ほむらちゃん」

ほむら「まどか!?」

 時間は動いていない。
 止まったままの時間の中で、まどかは微笑みかけてきた。
 なんとなく、予感はあった。もはや自分の力の及ばない領域に、まどかは居るのだと。


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