987:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)[saga sage]
2012/10/11(木) 02:07:26.56 ID:mksfoAtL0
『あー、現在航行中の船舶と、ISに告げる。この空域、海域は現在IS学園の管理下にあって封鎖されてる。許可のない、えー、あー…… なんて言えばいいんだろ、警告って』
そんな間の抜けた親友の声に、俺の口は思わず動いていた。
『ばーか、そんな時は。許可のない侵入は許されていない、即刻退去せよ。さもなくば―― とか言っとけばいいんだよ。漫画でもそんな場面あんだろ?』
『おう、なるほど。じゃあ――』
あまりにも自然に返したからか、一夏のほうも普通に返してくる。
腹の底のほうから緩やかな笑いがこみ上げてきて、そのせいか肋骨あたりがじくりと痛んだ。
PICの影響下のおかげで体への負担は減っているが、やはり福音から受けた負傷は軽くは無いようだ。
『おい! その声もしかして!』
『よ、お出迎えご苦労さん。早く帰ろうぜ、結構あちこちガタ来てるんだ。ふかふかの布団で眠りてえよ』
『弾!?』
半分本音の軽口をたたきながら一夏に応答する。
しかしまったくなんでそこまで驚いてるんだまったく。
『なんでお前が?』
『なんでお前が? たって、俺は俺だからしょうがないだろうが。お前こそ、何でそんなに不審がってるんだよ?』
『いやいや、だってお前の機体識別コード変わってるし、遠目に見ても機体変わってるし』
そこまで言われてようやく気づく。
さっき表示された第二次移行完了のメッセージ、第二次移行後なら機体外見は変わってるだろう。識別コードの方は知らんけど。
『あ、悪りいちょっと色々あったんだよ。正直説明したいことやら何やらがいっぱいあるんだが…… まぁとにかくいっぺん帰ろう。あぁそれと鈴を呼べるか? ちょっと手伝ってもらいたいことがあるんだ』
さっき見た白昼夢の中で聞いた話、それに不可解な福音の暴走。俺を不安な気持ちに陥れる要素が盛りだくさん。
けれど今はとても落ち着いている、安心しきっている。
『弾さん!! 弾さんですわよね!! 無事なんですの!? 私、ずっと心配で…… 心配で……』
唐突に耳いっぱいに広がる女の子の声。
きっと、ずっと聞きたかった女の子の声。
セシリアは顔を見なくてもわかるほど、泣きそうになっていた。
『あぁ、セシリア。無事とはいえないけどなんとかな。すまないけど一回鈴と話させてくれないか? ちょっとあいつの助けが必要でさ』
『あ、はい…… すみません、私少し取り乱してしまって――』
俺はセシリアをなだめるように冷静に言葉を吐き出していく。
興奮は収まったようだけど、悲しそうなその声は変わらず、俺の心を締め付ける。
だから、そんな声が続かないように、さらに俺は言葉を紡ぐ。
『その代わり、あとでいっぱい話そう。俺、セシリアに話したいことがいっぱいあるんだ』
『ぁ…… はい!』
返ってくる声に、さっきまでの悲しい音はなかった。
いつも聞いているセシリアの声で、俺の聞きたいセシリアの声だった。
『はぁい、あたしに話ってなによ色男』
『俺の下にいる船が見えるよな? この人たちたぶん中国人で――』
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