過去ログ - 一夏「なんでお前が?」
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995:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)[saga sage]
2012/10/11(木) 02:12:45.21 ID:mksfoAtL0


手持ち無沙汰な右手をセシリアの頭に乗せて、そのまま撫でる。
妹の髪よりも幾分かさらさらしていてさわり心地がいい。

「蘭も大概、手入れに気をつかってるみたいだけど、セシリアにはさすがにかなわねえか」

蘭だって、兄の贔屓目を抜きにしても学業優秀、眉目秀麗と言えるだろう。
けれどセシリアは、俺の好きな女の子は、こんなにも可愛くて、頭も良くて、ISのイギリス代表候補生で、俺のこと心配したり気遣ってくれたりして、この頃なんか料理の腕まで上がってきている。

「俺っていつの間にこんなセシリアにぞっこんになってたんだろ? 最初に会ったときなんてひどいもんだったくせにさ」

いつの間にか俺の心の隅々までこの女の子の存在は広がっていて、いつだって何をしてるときだってこの女の子の存在を感じてる。
あぁ、畜生。相手が目の前で眠っているからって、口が軽くなっちまってる。
普段言えないことでもすんなり言えてしまう。

「セシリア――」

さらさらしてて、ふわふわしてて、少し暖かい。
そんな彼女の髪の感触を楽しみながら、なんでもないように言ってしまう。

「好きだ…… 大好きだ」

本当に、彼女が起きている間に言えたらどんなにいいだろう。
ふられたらなんて考えがよぎって、とてもじゃないけど言えないよな。

(本当に、我ながらなさけないよ全く)

今の時間を確認する。
おそらくもうすぐ夜明けだ、だけど少しくらいなら眠れるだろう。
もう一度だけセシリアの頭を撫でる。
心地いい感覚に別れをつげるのを拒むように、自分の手の動きが僅かに鈍ったように感じた。
けれどただ手を動かすだけの動作に、鈍っていたとしても数秒もかからない。
瞼を閉じて、ゆっくりと息を吸い込んだ。
自分のものでない香りが鼻腔をくすぐり、眠ろうとした神経が少しだけざわめいた。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



「赤椿の稼働率は絢爛舞踏も含めて四十三パーセントか…… まぁ今の状況から考えると上出来っていうべきなのかなぁ」

夜の明ける境目、空の色が淡く光るような青を映し出している中、その美しい情景には目もくれず、目の前に浮かび上がる空中投影型のディスプレイに写る数字に夢中な少女のような女性が一人。

「束」

こちらもまた、他一切は知ったことかといった様子で目の前の女性、篠ノ之束を見つめる女性が一人。

「あ、ちーちゃん。ちょうどいいとこに来たね。さっきまでいっくんと白式のデータを見てたんだけどすごいんだよ! まっさか搭乗者の生体再生まで可能だなんてさ!これじゃまるで――」

「お前が心血を注いで作り上げた、白騎士のようだな。最古のコアを使用したあの機体のようだ、と。そう言いたいのであれば白々しいという一言を送らせてもらおうか」

「あ、今のって白でかけたジョーク? やめなよ、ちーちゃんにユーモアのセンスは――」

どこからともなく出席簿を取り出した織斑千冬女史は、稀代の天才の脳髄に向かって容赦なくそれを振り下ろした。

「っづぁ!!」

女の出す悲鳴ではない。
むしろつぶされたカエルのような悲鳴が、二人の立っている展望台に響く。

「私はそんな話をしに来たのではない」

「わーかってる。わかってるからそれしまってよ〜」




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