過去ログ - 銀「黒が好き」 滝壺「そんな銀を私は応援してる」
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loss
[saga]
2011/06/22(水) 03:24:59.49 ID:oHhFULTO0
繰り返し見る懐かしい悪夢が、いつもより鮮明だったのはこの出会いを
暗示していたのか、浜面は左を大きく振りながら、少し離れた歩道にいる人物に声を掛けた。
「李さん!」
まるで、弾かれたように緑色の若干くたびれたコートを着た人物は
振り向き、しっかりと隣を歩く銀髪の女性を抱き寄せ、鋭い眼光で浜面を睨みつけた。
「…誰だ?」
そのあまりの鋭さに浜面は鳥肌がたった。浜面の知る李舜生という学生は
どこか天然でいつも優しげな笑顔を浮かべている青年だった。なのに、
目の前にいる人物は誰だ。本物の殺し屋にでも出くわした様な錯覚に陥る。
「あの浜面です。ほら、よく飯作りに行ってた『実美』の兄の仕上っす」
「…仕上君?」
「そうっすよ」
あまりの威圧感に浜面は下っ端だったころの昔の口調に戻ってしまった。
それと同時に何故か、自分がまだまともだった頃を知っている人物がいて
くれたことがたまらなく嬉しかった。
「どうしてこんな所に?」
殺気立っていた雰囲気が消え、浜面が知っている李舜生の顔に戻った。
どうしてこんな所にいるのか。それは家に誰も居ないから。
だが、それは別にここに留まる理由にはならない。
ここは想像以上に危険な町。兵器が学生として徘徊する町。
「…家族を探しに」
そんな言葉が口から洩れていた。それとも、それが本音だったのかもしれない。
ひょっとしたらここにいれば会えるんじゃないかとどこかで思っているのかもしれない。
そんな想いに浜面は囚われた。妙にノスタルジックな気分だった。
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